福島県立医科大学 リエゾンカンファレンス

紺野慎一 福島県立医科大学 リエゾンカンファレンス Practice of Pain Management 2012;3(2):114-129

  • リエゾン治療のポイント 
    • まず大切なのは、整形外科医が患者さんの痛みをすべて受け入れ、「大変ですね」と共感を示すことです。
    • 慢性疼痛において、患者さんに前向きに治療に取り組む気持ちをもってもらうことは、治療に良い影響を与えます。
  • 慢性疼痛治療の取り組み方を心身医療科との協力で学ぶ
    • たとえれば、整形外科医が大工で、心身医療科が哲学者という印象です。
    • こと慢性的な痛みは、治療期間だけで治療方針が判断できるほど単純ではありません。
    • 連携を始めた当初、丹羽先生が整形外科の医師に、「そんなにあせって治療をすすめなくてよいのでは」とアドバイスをくださいました。
  • リエゾン治療の実際
    • リエゾン治療が奏功しにくいのは、患者さん自身が心理的な要因で痛みが生じているという説明を全く受け入れない例、あるいは口では理解したといっても、心のどこかで、「そんなはずはない」という思いを抱えている例です。
  • 身体表現性障害は整形外科だけでなく、耳鼻科では難聴、眼科では視力低下、消化器内科では腹痛、神経内科では頭痛というように、不定愁訴として現れます。
  • リエゾン治療の対象になる患者さんに共通する点は、まず整形外科的治療だけでは痛みが改善せず、治療が長引く点です。その多くが、身体的所見のわりに痛みの訴えが多く、外科的治療でかえって痛みが悪化する場合もあります。これらの症例はいくつかのタイプに分類できると思います。
    • うつ病を併発し、身体症状を訴えるタイプ
    • 疼痛性障害といわれ、精神医学的な問題があって痛みがいつまでも取れないタイプ
    • 身体化障害 たとえば腰痛もしびれもあれば首も手も痛い
    • 転換性障害 痛みの訴えが非常にオーバー
    • 軽度発達障害 患者さん本人のこだわりが強い。身体症状に強くこだわる傾向
  • 人間であれば誰しも痛みを経験しますが、痛みに対して、「自分は何ともない、たいしたことはない」と捉えるか、「痛みが怖い、どうしようもない」と捉えるかで、慢性化するかどうかが分かれます
  • 痛みを過敏に気にする方は、痛みを繰り返して考えたり、痛みに対して自分は無力であると考えるようになり、恐怖感が強くなり、結果として、日常活動を控え、生活に支障がでます。
  • 活動性の低下にともない、実際に身体機能が落ちるだけでなく外出しないために人間関係も悪くなり、仕事もできなくなり、家事もできなくなる結果、気持ちが落ち込み、さらに周囲の人間関係がうまくいかなくなります。するとそれがストレスとなって、当初よりも、痛みを強く感じてしまうようになる、という悪循環を繰り返すようになります。
  • 心理社会的要因が痛みに関係していると思っても、医師や医療スタッフ側からそれを押し付けず、患者さん自身が気づいて納得してもらうことが必要です。
  • 大切なのは治療のスタートラインとして、患者さんの痛みを受容し、十分に話を聞いて信頼関係を気づくことです。
  • 腰痛に必ずしも明確な器質的疾患があるわけではないことを納得していただき、「痛みの原因にはいろいろな要素がかかわるので、心理社会的な治療を行うことで少しでも痛みが楽になる可能性があります。」と、あくまで痛みを和らげる治療の一つとして、精神科的治療を提案するようにしています。