小児に特有な痛み

稲毛康司 小児に特有な痛み 麻酔科学レクチャー  2010;2(4):792-800

  • 疼痛は、環境や発達過程、社会文化や生活体験など各要因により相互に関係付けられる感覚的、感情的、認知的、かつ行動の構成要素に影響をうけます。疼痛が、我慢出来ないほどに達した時、疼痛に圧倒された時、疼痛の出所が不明な時、痛みを陰惨なものであると感じた時、疼痛が長引く慢性的なものであるとき、疼痛は“苦痛”となります。疼痛と苦痛の概念は、単純な感覚的経験を飛び越えたものです。苦痛とは精神的、肉体的に感ずる苦しみや痛みです。疼痛処置の主要なねらいは、直近の鎮痛処置だけではなく、将来にわたって辛い体験とならないようにすることです。
  • 身体的機能障害(転換性ヒステリー)で、疼痛を訴えているもので、多彩な身体症状が多数の器官に起こりますが、身体所見や検査で対応する異常がみられません。症状としては疼痛(頭痛、腹痛、胸痛、四肢痛など)、消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢)がみられることがあります。誇張した言葉で表現しますが、特定の事実に基づいた情報が欠如することが多いようです。心的外傷体験が虐待であったり、ドメスティックバイオレンス(妻に対する夫の暴力行為)の目撃者であったりする場合があるので注意します。