西原真理、牛田享宏 疼痛治療の今日的意義 臨整外 2011;46(4):287-289

  • 疼痛はその定義上、障害性の要素と同時に大脳皮質の機能障害という側面を含んでおり、統合的な理解を進めなければならない
  • 痛みは主観的な症状であり、末梢組織の障害から、脊髄、大脳皮質の機能異常まで各レベルで捉えていく必要がある。この難しさによって、また客観性の乏しさによって「痛み」は訴えとして頻度が高く、臨床的に重要でありながら、第5のバイタルサインとして組み込まれることが遅れてきたのではないだろうか
  • 一般的に言われている急性・慢性や、侵害受容性・神経障害性・心因性の分類は医師の診療・処方行動に大きな影響を与えている。二分法は理解しやすく、魅力的で、その誘惑は絶大である。しかし実際の痛みに境界線が明瞭であることは少なく、治療を行う際には、「痛みはそれぞれの要素が混じりあった状態で、単にその割合の違いが存在するのみでる」と、これまでの概念をシフトさせる必要がある
  • 疼痛治療の今日的意義
    • 1社会情勢的側面
        • 生命に重点を置いた医療から、活動性が保たれることなど生活の質そのものを大切にする医療への変化がもとめられてきた
    • 薬物療法の変化
  • 今後の運動器疼痛のあり方
    • これからも薬物療法は進化し続けるであろうが、残念ながら、薬物療法のみで慢性疼痛を治療することは、特に難治性になるほど難しいと言わざろう得ない。欧米ではすでに40年以上前から慢性疼痛の治療は包括的なケアを多職種によって行うことが望ましいと考えられ、実践されてきた
    • われわれは難治性の慢性運動器疼痛の治療にはどうしても集学的アプローチが必要であると実感しているが、今後、運動器疼痛の教育(医療者、患者とともに)を広め、新しい治療法開発を進めるためにも、このような仕組み(集学的治療)が全国に拡大することを願ってやまない