松平浩、町田秀人、内田毅、小西宏昭、三好光太 仕事に支障をきたす非特異的腰痛の危険因子の検討 日本職業・災害医学会会誌 2009;57(1):5-10

  • 欧米では、作業関連性腰痛が社会および経済に与える影響について多くの研究が行われてきた。これまで、腰痛の発症原因に関する研究では、身体的負荷および人間工学的問題がより重点的に検討されてきたが、いくつかの前向き研究の結果から、仕事の満足度や精神的ストレスなどの心理社会的要因も腰痛の発症に影響いしていることが明らかになってきた
  • 我が国においては、重量物運搬や不良な作業姿勢などが原因あるいは誘因となり急性に生じる災害性腰痛と、就業により増悪する慢性の非災害性腰痛に区別されて久しいが、心理社会的要因も含めた腰痛発症関連因子の検討を目的とした質の高いコホート研究は実施されていないのが現状である
  • 対象者の属性 男性2330人、平均年齢43歳主な職種 事務25%、営業15%、製造9%、看護師9%等
  • 仕事に支障をきたす非特異的腰痛の新規発生率 5.1%(149/2902)
    • 有意な生活習慣要因 前屈が硬いこと、ヘビースモーカ BI >400、食事が常に不規則、腰痛既往
    • 有意な作業関連要因 中腰・前かがみの姿勢で一日4時間以上従事、20?以上あるいは介護での力仕事に従事、一日に4時間以上の立ち仕事の従事、一日4時間以上の車両運転に従事
    • 有意な作業動作 腰の捻じり動作、運び動作、押し動作、下ろし動作、前屈み動作、平行移動動作、持ち上げ動作の順に、一日4時間以上従事していること
    • 有意な作業環境 狭く窮屈な作業空間で一日4時間以上従事、足場が不安定、ゆれ振動を伴う、蒸し暑い環境、段差障害物が多い、寒い環境
    • 有意な勤務状況 休憩場所が不十分、危険を伴う作業、勤務体制が不規則、休憩時間が少ない
    • 有意な心理社会的要因 働きがいが低い、自覚的な身体的負担度が高い、仕事のコントロール度が低い、感じている仕事の適合度が低い、職場環境によるストレスが多い、疲労感が強い、身体的愁訴が多い、活気がない、不安感が強い、イライラ感が強い、抑うつ度が強い、仕事生活の満足度が低い
  • 仕事に支障をきたすほど症状の程度の思い腰痛を予防するには、人間工学的側面へのアプローチや作業環境の改善のみならず、勤労者のストレスなど心理社会的側面も十分に考慮してアプローチする必要性があることが示唆された。