疼痛認知の神経回路

仙谷恵美子 疼痛認知の神経回路 脊椎脊髄 2011;24(5):325-331

  • 痛みの3つの側面
    • 感覚―識別的 sensory-discriminative, 感情―情動的 affective-motivational, 認知―評価的 cognitive-evaluative(注意、予測、過去に経験した痛みの記憶などに関連)
  • 生理的痛みと病的痛み
  • 急性痛と慢性痛
  • 正常な神経根の圧迫では、dyesthesia,paresthesia,筋力低下は生じるが、痛みは生じない。
  • 「しびれ」は大径線維も含めた知覚線維の変性・再生に伴って起こる異常感覚であり、痛みとは別物であるが、病態によっては併存することもあると思われる。
  • 痛み上行経路
    • 脊髄―視床路、脊髄―橋―扁桃体路、脊髄―視床下部
    • 脊髄視床路 STT
      • I層のニューロンは特異的侵害受容(nociceptive specific;NS)ニューロンで、末梢からのAδ線維およびC線維の入力をうけ、それぞれ鋭い痛み(first pain)、焼けつくような鈍い痛み(second pain)を伝える
      • STTには支障の外側部を経由してS1,S2に終わる外側系と、視床の内側を経由して前帯状回(ACC)に至る内側系があり、前者は痛みの識別に、後者は痛みの情動、認知、注意集中に関与している
  • CM-Pf複合体は、霊長類で特によく発達しており、感覚系と運動系の接点として、感覚入力に対する反応・行動の選択に関与すると考えられている
  • 脊髄―橋―扁桃体路は後角I層ニューロンから発し、5-hydroxytryptamine(5-HT)を含む下行系疼痛増強(descending facilitation)を介して慢性痛の維持に働く
  • 脊髄から起こる痛覚の上行路は、自律神経系を活性化し、逃避行動を起こし、覚せい、恐怖を引き起こす
  • S2を破壊すると、痛み熱刺激を与えても逃避行動がみられない
  • I層のSTTニューロンに由来する脊髄―視床―皮質路は、小径線維により伝えられるさまざまな身体内部情報(温痛覚、かゆみ、内臓感覚など)を収束してICに伝え、ホメオスタシスの維持に重要な役割を果たしている
  • ヒトでのICの障害は、syndrome of pain asymboliaを起こし、痛みを知覚しても逃避行動がみられなくなる
  • ACCやPFCは、社会的疎外などの心理的な痛み(social pain)によっても活性化し、さらに、ACCとICは他人の痛みに共感することによっても活性化することが示されており、これらの皮質領域が痛みの情動面に深くかかわっていることがわかる