科学技術の役割 原発事故に学ぶ 上

畑村洋太郎 科学技術の役割 原発事故に学ぶ 上 日本経済新聞 2011/5/30

  • 人間には見たくないものは見ない、考えたくないことは考えない、都合の悪い事柄はなかったことにするという習性がある
  • 田老地区の古い防潮堤 手動で水門を開閉している。「なぜ手動なのか」「電動では電気が来なくなると閉められないでしょう」と案内人は答えた
  • 外部との関係が遮断されて電気が来なくなるような最悪の事態を想定することがいかに重要かを示している
  • 問題なのは経験が判断の邪魔をしてしまうことだ。「長く生きてきたが、ここまで津波が来たことがない」という経験が、即座の避難行動をとらせなかったケースがあるのではないか
  • 筆者は、失敗の記憶には法則性があると指摘している。個人は3年で忘れ、組織は30年で途絶え、地域も60年で忘れる。歴史的な事象も300年で社会から消え、1200年たつとその出来事が起きたことさえ誰も知らなくなる。
  • 都合の悪い事柄はなかったのことにするのが人間の本質なのだ。
  • 想定外の範囲を決める線引きの際に、「欲・得・便利さ」が入り込む
  • 原子力はエネルギーを取り出すのに大切だが、ものすごく危ないものだという前提で付き合うべきだった。
  • 安全性の実現手段には、人間がセンサーやシステムを使って危険を回避する「制御安全」と、事故が起きても製品や機械そのものが安全な方向に働くように設計されている「本質安全」がある。
  • 「あいつが悪い」と指摘するのは「別人ならばうまくできた」という問題のすり替えにつながり、物事の本質を分からなくしてしまう。
  • 筆者は、どんな産業分野でも十分な失敗経験を積むには200年かかると考える。
  • 黒4ダム 34万キロワット 原発は一基で100万キロワットを超える
  • 原発の将来像を描く際には前述した「本質安全」の考え方を取り入れなければならない。最悪の事態を想定して、それに対応できるよう従来とは別の思考ルートで設計士なければならない。要求機能と制約条件を定めれば、必ず設計は可能なはずだ。