町田英世、中井由英 プライマリーケアでの慢性疼痛治療 −患者の訴えをどうとらえるか 心療内科 2002;6:432-436

  • Loeserのモデルは、「痛みは組織損傷によりひきおこされる知覚神経の入力である痛み知覚(nociception),その入力の中枢神経での感受と理解される痛み(pain),中枢神経のネガティブな情動反応として生じる苦痛(suffering)、そのけっかであり、唯一客観的に認識可能な痛み行動(pain behavior)の4つの階層からなる複合減少ととらえている
  • 長期化した痛みは、医師や家族など周囲の人々との関係性も複雑化し、うつ状態や不眠、不安、強迫性などといった病状も目立つようになったりする。ローカルな痛みの訴えは、辞書にはのせきれないさまざまな意味が付加されていて、しかも変化し続けているといえる。
  • Kleinmann,A “疾病(disease)とは、生物学的プロセスと心理学的プロセスの両方あるいは一方の機能不全をさす。それに対し、“病(やまい;illness)”とは、知覚された疾病の心理社会的な体験のされ方や意味ずけをさすとのべている。
  • 患者は新たな体験を自らの生き方の部分に位置づけられるにくいからこそ、不安であり、今後どうなっていくのか自信が回復できない状態にあるといえる
  • 彼女の語る「痛み」は、「夫に理解してもらえなかった辛さ」を含む意味合いあがあると感じながら聞いていた
  • 慢性疼痛治療には、一般診療よりは長めの時間が必要であることは仕方がない面があろうが、時間そのものの長さよりも、訴えやその言葉を丁寧に聞く姿勢が問われれているのではないかと思われる
  • Narrative-based medicine(NBM) 最近の医療のなかで軽視されがちであった「患者のストーリー」を重視し、そのストーリーに基づいた「医学的処置や医療サービス」を位置づけるべきであるという考え方に基づくものである。
  • 慢性疼痛の治療 チーム医療 複雑な意味を解釈するには、治療者一人では、不十分であり、多人数に意見が集約された方がより効果的であると考えられる。