笠原諭、丹羽真一 精神科的アプローチの実際 調剤と情報 2011;17:171-174

  • 医学的に説明が困難な慢性疼痛の患者を診断する際には、不安障害、気分障害精神病性障害の可能性がある。それは身体表現性障害の各障害に有効性の確立した治療法はまだないが、不安障害、気分障害精神病性障害に対してはそれぞれに有効な治療法が確立しており、それらを治療することで慢性疼痛が改善されることがあるからである
  • 薬物療法の基本は、経口投与、定時投与を原則とする。その理由は、痛み体験の遷延化に伴い、鎮痛薬の点滴を受ける、頻回にナースコールをするなどの疼痛行動が、周囲とのコミュニケーションの主要なツールとなっていることが多く、その疼痛行動も減らしていく必要があるからである。
  • 近年、疼痛領域におけるドパミンの神経伝達の働きに注目が集まってきている。疼痛と快感は行動の強力な動機付けになるという点で共通しており、ともに反応する脳部分は一致し、オピオイドドパミンシステムにより制御されていると考えられている。
  • ドパミン作動性伝達が低下すると痛覚過敏になり、亢進すると痛覚鈍麻となることが推測される
  • 著者らはドパミンシステム・スタビライザーとよばれる抗精神病薬アリピプラゾールの慢性疼痛に対する治療効果に注目している
  • アリピプラゾールを弱いドパミンとして考えることもできる