室津恵三、本田哲三 整形外科領域の慢性疼痛患者に対する認知ー行動療法的アプローチ こころの臨床ア・ラ・カルト 1994;13:15-20

  • 東海大学リハビリ科のPMP;pain management program 3週間の外来通院プログラム 行動理論の立場から疼痛行為の減少をはかるとともに、医学的教育や心理的実習により患者の痛みに対する不適切な認知や態度(「痛いからないにもできない」を、より適切なもの「痛いけどやりたいことはできるし、生活も十分に楽しめる」)に修正することを目指す。患者が「痛みと共に生きる(living with pain)」という生活態度を身につけるように援助するのがわれわれのPMPの目標である
  • 患者にとって痛みはまさにリアルな体験であり、その体験を否定されることは自分自身を否定されるのと同じように体験される。そこで患者は必死に痛みの真実性を訴えるのであるが、医療スタッフは訴えの執拗にうんざりし、患者をますます疎んじるようになるという悪循環がおうおうにして形成されがちである。その悪循環を断ち切るためには、まず、どんな患者の痛みでもリアルなものとして一旦はうけとめ、その上で訴えを丁寧に聴くという態度がまず要請される。
  • 「器質的な病因がなくてもいたいことはあるのです。痛みに影響を与えるさまざまな要因があって、その中には気分や性格、対人関係の持ち方も含まれるといわれています。あなたの場合、そのような要因があるのかどうかまだわかりません。ひよっとしたらないかもしれません。でも、あるとしたら、どのようなものがあるか知りたいと思うし、それについて考えていくのも意味が無いことではないと思います。」(面接導入)
  • 慢性疼痛患者の性格には、潔癖さや強迫的心性が往々にして認められる。
  • 受動的な疼痛行為には自己主張訓練を施行
  • 患者の疼痛行為により(操作され)スタッフ間に分裂・対立が生じることがある
  • PMPの要点は、「行動変容による疼痛行動の減少」よりもむしろ、患者の痛みに対する認知や態度の修正(「痛いから何も出来ない」から「痛いければやりたいことはやれる」へ)にある、との理解に至っている