水村和枝 痛みのメカニズムのエビデンス  臨牀看護 2006;32:1839-1849

  • 痛みの定義 組織の実際のまたはおこりうる損傷に伴うか、あるいはこのような組織損傷に関連して記述される不快な感覚的、情動的な経験
  • 単に感覚の問題でなく、情動とも結びついた複雑なものである
  • 痛み受容器
    • 閾値機械受容器/A線維機械熱侵害受容器I型 鋭利なものによる機械刺激に特異的に反応する 熱にも反応するがその閾値は高く、熱刺激が続くと次第に反応が増大する
    • A線維機械熱侵害受容器II型(AMH II型)機械刺激にはあまり反応せず、42-43℃の熱刺激によく反応するもののすぐ順応してしまう
    • ポリモーダル受容器/ポリモーダル侵害受容器 熱にも、機械的な刺激にも、発痛物質にも反応する
    • 熱侵害受容器 熱に特異的に反応する
    • 非活動性侵害受容器  silent nociceptor/sleeping fiber 健常組織では機械刺激に対して反応しないが、炎症状態では反応性を示す
    • 閾値の受容器は、動きなどを伝えて反射活動を起こすニューロンに情報を伝えているだけでなく、閾値の高い受容器や非活動性侵害受容器からの入力を受けている痛み系のニューロンにもシナプスしていると考える
    • 刺激強度が低い時は低閾値の受容器だけが興奮し、動きなどを伝えて反射を起こすニューロンのみが興奮させられる。刺激強度が上がるにつれ低閾値の受容器の放電頻度が高くなり、かつ閾値の高い受容器も放電を開始し、炎症があるときなどはさらに非活動性侵害受容器も活動を始めると、三者の入力が合わさって痛みの経路のニューロンを興奮させるようになる、というものである
    • 痛み受容器は、特別な小体構造をもたない自由神経終末であり、ここで熱や化学的・機械的エネルギーを電気的信号(活動電位)へ変換している。
  • 脊髄から視床
    • 痛み受容器の細胞体は脊髄神経節に存在し、その脊髄内終末は主として脊髄後角表層(I,II層)と、それより深い後角頸部(V層)に分布している
    • 広作動域ニューロン(V層),痛み刺激にのみ反応する特異的侵害受容ニューロン(I,II層)
    • 伝導速度や反応の持続、感作のされやすさ、などから広作動域ニューロンのほうが、痛みに、より重要な役割を担っていると考えている研究者もある
    • V層の広作動域ニューロンが“感覚としての痛み”に大きな役割を担っていることが推定されるが、どこで、どのようにして痛みと触・圧覚の分離が行われるか、今後に残された課題であろう。
    • 痛み刺激に特異的に反応するI層のニューロンが、情動との関係の深い脳領域に当社している機能的意味も未解明である。
    • 痛み受容器が脊髄で放出する伝達物質 グルタミン酸、サブスタンスPなどの神経ペプチド
    • グルタミン酸は、二次ニューロン側にあるAMPA受容体、NMDA受容体、代謝グルタミン酸受容体を介して、二次ニューロンの脱分極を引き起こす。炎症や神経損傷などの痛覚過敏状態では、AMPA受容体などを介した脱分極によってNMDA受容体が活性化され、痛み情報の伝達に大きな役割を担うようになる
  • 大脳
    • 痛みの識別的・弁別的側面 一次および二次体性感覚野 
    • 情動面には前帯状回や島
    • 認識的側面 頭頂連合野扁桃体