松岡紘史 慢性疼痛に対する認知行動療法の効果と治療効果の媒介要因および調整要因 心身医 2010;50:1145-1149
- 慢性疼痛に対する認知行動論的理論
- 1960-1970代はじめに導入 オペラント条件づけの概念を代表とする行動療法的なアプローチが主流
- 1980 認知行動療法的アプローチが導入
- 認知行動療法の直接的なターゲットは、痛み症状そのものより、そうした症状に影響を及ぼしている行動、認知、感情、環境などの媒介因子。
- 認知行動療法の効果は治療を行う対象者、状況によって影響をうける可能性があり、そうした治療効果の調整因子を明らかにすることによって、認知行動療法の効果を高めることや認知行動療法の効果がみられない患者の同定が期待される
- 媒介因子
- 生活障害の改善を導く因子
- 恐怖―回避に関する信念 fear-avoidance beliefs questionnaire およびpain anxiety symptoms scaleや破局的思考 coping strategies questionnaire、痛みに対するコントロール感 coping strategies questionnaire)を含む認知的要因
- 恐怖-回避に関する信念に焦点をあてた介入 段階的エクスポージャー
- その他の媒介因子に対する介入方法 認知的再体制化や対対処略訓練を用いた破局的思考に焦点を絞った治療やディストラクションやマインドフルネスの技法を用いた痛みに対する注意の向き方に焦点を絞った治療
- 調整因子 multidimensional pain inventory (MPI)を用いた分類 adaptive coper/dysfunctional/interpersonally distressed
- adaptive coperは痛みや苦痛感が低く、生活上の制限をそれほど受けていない患者
- dysfunctional/interpersonally distressedは痛みのレベルが強く、それぞれ心理的苦痛が強く生活上の制限が強い、ソーシャルサポートが少ないという特徴がある
- MPI以外の調整因子 患者が治療に対して抱く期待感
- 慢性疼痛患者は、自らの痛みの問題を身体面から理解することは多いが、心理社会的な側面から症状を理解することは少ない。そうした観点から考えると、慢性疼痛患者には病態の説明と認知行動療法という治療が必要となる理由をていねいに提示する必要があり、そうすることのよって認知行動療法の効果が高まると考えられる