菊地臣一 慢性腰痛は不定愁訴? ー腰痛のEBMを追求するとNBMになるー 治療 2010:92(2):225-230

  • 腰痛の捉え方の大幅な変革 従来の「脊椎の障害」という捉え方から、「生物、心理、社会的疼痛症候群」として捉えるという動き
  • 腰痛の自然経過についての新知見 「腰痛はself-limitedで予後良好である」から「腰痛は障害にわたり再発を繰り返すことが少なくなくない」
  • 腰痛を主訴とした患者の受診目的の明確化が必要 3群
    • 診断が目的
    • 治療が目的 とにかく痛みをとってくれ
    • 孤独の癒しを目的 受診仲間や医療提供者との語らいによる安らぎを求めて受診
    • 受診目的を的確に把握して、それに応じた対応をする
  • 医療従事者の役割の変化 cureからcareへ
  • 医療従事者の対応が治療成績や満足度向上の鍵
    • EBMでは先人たちの知恵を借りることができるが、その前後の治療行為は医療従事者と患者という当事者だけの世界である。この部分には数値化できない領域や問題があり、それは言葉でしか表せない。ここにこそNBMが必要である。したがって、EBMとNBMが両立して初めて充実した医療が提供できるといえる。
    • 病態は同じであっても、患者の価値観や希望を尊重し、患者との「共闘」の姿勢ができれば、患者と医師の良好な信頼関係が構築出来る
    • そして良好な関係下での、患者の医師の共感支持、そして励ましは、なによりの薬になる。
  • 患者と医師との信頼関係確率のためのアート
  • 患者への共感の提示
    • 医師は、患者に「私はあなたに関心をもっている。私はあなたを共感をもって受け入れている」ということを、明確な態度や言葉を通じて伝えることが大切
    • 診察を始める前に、「その痛みは辛いんですね」とか、「ここまで来るのが大変だったでしょう」といった一言で患者の心をつかむことができる。
  • 患者の関心事への問いかけ
  • 患者の安心感の獲得
  • 患者の意欲を引き出す
    • 患者が目的を達成した場合には、それを賞賛して一緒に喜ぶ、医療従事者が患者の治療に対する意欲に注目していることにより、患者の治療効果や満足度は向上する
  • 患者の希望の灯を消さない
  • 前向きな説明
    • よかったですね。手術になるような重大な原因は見当たりません。必ずよくなります。今大切なのは、この痛みをどう日常生活や仕事に差し支えないようにするかを考えることです。