細井昌子、富岡光直 痛みと不信 痛みの情動成分への対処の重要性 Ortho Community 2009 No33 p7-8

  • 整形外科医が外科医であるとともに、心身医学を含んだ診療を患者から求められていることを実感する。整形外科の手術の妙に加えて、ヒトの心と体の妙を体験的に理解しているのが整形外科領域における名医であろう
  • 末梢の痛覚線維から上行した侵害受容情報は、外側脊髄視床路を介して、痛みの感覚成分を大脳の体性感覚野に伝えているが、痛みの情動成分は、内側脊髄視床路をを介して、前部帯状回や島皮質などに伝えられ、痛みの苦悩に関与している
  • また、橋の外側結合腕傍核を介して、不快情動の中枢である扁桃体の中心核へ入力する経路である脊髄結合腕傍核扁桃体路もある。前部帯状回や島皮質は前頭前野と関連し、痛みの認知的評価が行われる
  • fMRI研究
    • 不信 前部帯状回、島皮質前部および前頭前野に変化
    • 不明瞭なこと 前部帯状回の活性が上昇
    • ヒトが医療を受ける中で、不信を感じるとき、おるいはどうしたら良いかわからないときには、痛みの不快情動成分に関与する前部帯状回や島皮質などの活性が増し、痛みの苦悩を深める可能性がある
  • 不信感が強いときにには、器質的疼痛でも痛みの不快情動成分が増して、痛みに対する耐性が減り、痛みの訴えが増大する。したがって、痛みの訴えを扱う整形外科医療においては、患者の心理社会的背景に配慮し、信頼関係の形成にエネルギーをかける医療コミュニケーションが重要である。
  • 医療不信が特に強いと感じられる症例では、背景にある人間不信や家族との葛藤がある可能性があり、医師が患者と防衛的に論争することは避け、臨床心理士心療内科との医療連携を検討することが重要である