- 国際疼痛学会の痛みの定義
- 組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このような障害をあらわす言葉をつかって述べられる不快な感覚、情動体験
- ここで注目すべきなのは、主観的な痛み体験だけでなく、情動体験を含めて「痛み」と定義し、ヒトが言葉を使って述べるという主観的な表現形をアウトプットとした体験であると明示していることである。
- 痛みの種類
- 痛みと陰性感情
- 実際の侵害刺激がない痛み体験も、侵害刺激を伴う痛み体験と同質な不快さを有すると考えられるからである
- 痛みの共感に、前部帯状回や島皮質が関与していることも示唆されており、痛そうにしている患者の周囲にいる家族などが患者と同化した陰性感情に苛まれ、情動的に不安定になることのエビデンスと位置づけられる
- 破局化 catastrophizing
- 破局化した患者と家族スタッフの認知行動の問題点
- 痛み医療の最前線で、患者家族および医療スタッフの全員をつらいものにしているのは、この生物学的エビデンスに支えられた認知行動学的問題点である破局化によると考えられる
- タイプ分類 懇願型、強迫型、脅迫型、平坦身体化型
- この患者家族の連携の際に、家族間の交流不全があると、家族間の病理が顕在化し、症例の個別化した特徴を形成することがある
- 破局化した患者家族の陰性感情を受け取った医師は、無力感に苛まれ、多忙な日常診療で何度もかかってくる電話や診療中の訴えに無意識ながらも、言語的あるいは非言語的に否定的トーンを患者や家族に伝えてしまうことがある。とくに否定的なトーンが伝わってしまった場合には、それを契機に患者家族が傷つき、医療不信を醸成してしまうことになる
- 初診の段階で、「過去に医療で嫌な思いをしたことがあるか」を具体的に聴取していると、患者家族の思考パターンが共感的に理解しやすいため、推奨される
- 難治化遷延化している症例では、さらにそういった過去の医療不信の個人的エピソードに加えて、身体的心理的性的虐待やネグレクトなどの虐待や、トラウマがあることがある。また、生育歴の中で自分の存在を大切にされてこなかった実存的な苦悩を背景に、根深い人間不信が潜在していることがある。表面的には身体的な痛みや医療不信を訴えていても、その訴え方の破局化が激しい場合には、そういった個人的な根深い背景があることをあらかじめ頭に入れておき、心療内科や精神神経科への紹介の時期が熟すのを待つことが重要な症例もある
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- 信、不信に関する脳機能を作り出す脳部位は腹内側前頭前野、両側島前部、背側前部帯状回など、不明瞭な葛藤状態の時は前部帯状回であることを報告した
- 前頭前野、前部帯状回、島皮質といった脳皮質は、pain matrixとして痛みの情動的、認知的評価に重要とされている脳部位である
- 痛覚に重要なこれらの部位が、不信の際にも活動しており、不信が痛覚系の情動的認知的システムを修飾している可能性を示唆するエビデンスとしてきょうみ部会
- つまりヒトは不信の状態の時には、侵害刺激時類似の脳活動が起こり、不信の状態で痛覚体験が生じると、痛覚が増強して体験される可能性もあると推測される
- 心療ペインクリニック
- 初診時には慢性疼痛の病態を評価する際に、患者家族との安定した信頼関係の形成をまず主眼において病態評価
- プラバシーを重視 一回30分を2−4回 医師または臨床心理士 慢性疼痛をもつ「人間」の部分にスポットをあてた面接
- 生育歴や心理社会的背景などを聞き取り、痛みに伴う苦悩の理解を試みることが重要である
- Watkins 医師(治療者)の医学的知識、技術以外で、治療効果に影響を与える人間的な部分ー治療的自我(therapeutic self)
- 熟練したペインクリニシャンは必要に迫られてこの治療的自我を磨かざろう得ない