牛田享宏、末冨勝敏、下和弘、大須賀友晃、新井健一、池本竜則 慢性痛の痛覚情報認知機構 ペインクリニック 2009;30(7):905-913

  • 慢性痛とそれに関与する脳活動部位
    • 健常者 主として脊髄視床路を上行してきた痛覚のシグナルは視床を介してSI,SII,島皮質、前帯状回前頭前野内側部などのpain matrixと呼ばれる痛みに関連する大脳皮質部位に投射
    • 慢性痛患者 神経系の感作や可塑的変化でかならずしも健常者と同じ経路でない。脳内では記憶や情動、自律神経系の影響など様々な要素が絡み合って痛み経験をしていくことから、脳活動にも大きな影響が生じる
  • 視床には多くの核が存在するが、痛みの伝達系においては、外側脊髄視床路が終末している腹側基底核群と、前脊髄視床路が終末している髄板内核群(主として外側中心核と束傍核)が重要な役割を果たしている
  • 前者は大脳皮質に主に投射する中継点であり、皮膚、内蔵、筋、関節からの識別性の間隔に関与
  • 後者は大脳辺縁系に投射し、痛みの情動等に関与
  • 慢性痛においては、疼痛状態において主に刺激伝達が引き起こされる対側の視床では活動がむしろ低下していることが散見されている。(中枢神経系の可塑的変化が起こっていることを示す)
  • Ikemotoら
    • 健常者に機械的侵害刺激を加えると、視床、SI,SII,帯状回、小脳における活動性の亢進が検出された
    • 患者群(アロデニア)においては、VASで健常者群よりも強い痛みが観察されたにも関わらず、末梢からの痛みの主な中枢である視床の活動は検出されず、SI,SII,帯状回(主として前帯状回)および運動野、補足運動野の活動が出現することを報告している
  • Ushidaら
  • 個々の痛み患者の評価法としての脳機能イメージング
    • 個々の症例ごとのfMRIデータに再現性と信頼性が要求される(情動やその日の状況の影響)