柴田政彦、井上隆弥、松田留美子、住谷昌彦、真下節 大阪大学医学部麻酔科での実践と課題 ペインクリニック 2003;24(10):1352-1356

  • 事故後の遷延性疼痛や医療行為の後に長期間続く痛みの場合、その頃までは微細な神経損傷や神経系のsensitizationなどをその理由として考えていたが、むしろオペラント機序に基づく疼痛行動の学習という見方の方が妥当である症例の方がはるかに多いという考えに至った
  • フロイト的力動精神医学に基づく面談による心理カウンセリングが功を奏することは稀で、認知行動療法が日常の活動性改善に効果があることを学んだ

本間真理、並木昭義 札幌医科大学医学部麻酔科での実際と課題 ペインクリニック 2003;24(10):1357-1364

豊川秀樹、塩谷正弘 NTT東日本関東病院での実践と課題 ペインクリニック 2003;24(10):1365-1370

  • 医師ーセラピストチームによる治療モデル
    • 心理アセスメントにより様々な患者背景が浮き彫りになってくる。面接により日常生活の様子が明らかになることで、痛み行動を把握しやすくなる
  • 臨床心理士により確保している診療報酬はSDSうつ性自己評価尺度、STAI状態特性不安検査などの心理テストを医師とともに検査、検査処理をおこなうことで得られる80点

北原雅樹 慢性疼痛の集学的治療 理論的基礎と日本での展開 ペインクリニック 2003;24(10):1371-1378

  • 1960 University of Washington multidisciplinary pain center by Bonica
  • MPTの基礎理論
  • 治療モデルの変化
    • 従来の痛みの治療の考え方は生物医学モデルで、それは「痛みには生物医学的原因がかならずあり、その原因を物理的治療法で除去すれば痛みは寛解し、痛みの寛解は患者の機能障害の現象に直結する」というもの
    • しかし、このモデルに基づいた治療法では対処できない難治性疼痛患者が多数存在する
    • 修正モデルは生物心理社会モデル 生物的因子、社会的因子、心理的因子が痛みには同等に重要であり、生物的因子を対象とした物理的治療法による痛みの寛解は、患者の機能障害の現象に直接関係しない。このもでるでは治療の目的は患者の日常生活動作を改善し、生活の質の向上を図ること
  • 役割の変化
    • まず患者は、医療者から、治療指示を受けて治してもらう受動的な患者から、自分の人生に目標をもち、自己の生活を自らの責任でコントロールし、治療に積極的に関わっていく能動的患者に変化する
    • 治療法は、痛みを抑えるという代理の目的ではなく、患者のADL,QOLを向上させるという真の目的を達成するために選択される。
  • パラダイムシフトが困難である
    • 医療者側は、長年身に付けてきた自分が疾患を治すという想いを振り切る必要に迫られる。まして患者にとって、痛みをなおしてもらう受動的立場から、自己責任をもち主体性のある能動的立場へ変化することは、アメリカでも極めて難しい
    • UWMPCなどで、初期に最も重要な治療目標は、生物医学的モデル的考えから生物心理社会モデル的考えに患者が移行するのを援助することとされている
    • 筆者の外来では、「重要なのはあなた自身の努力である」「われわれが治しているのではなく、あなたが治ろうとしているのを援助している」「あなたが何をしたいか、どうなりたいのかが重要だ」というようなメッセージを繰り返し、明示的、暗示的に伝えるようにしている。
  • アメリカのMPTの現状
    • 平均一人当たり8100ドル、UWMPCでは15000-20000ドル