水野泰行、福永幹彦、中井吉英 疼痛患者における痛みの強さ、辛さ、心身関与バランスの関係 慢性疼痛 2008;27(1):49-54

  • IASPの定義によると疼痛とは「不快な感覚的および情動的な体験」であり、「不快でなければ疼痛と呼ぶべきではない」とされている
  • つまり疼痛は常に不快感をともなうものであり、その治療にあたっては情動的側面を考慮すべきである
  • Lethem 恐怖のために痛みを回避することによって、機能不全状態が生じ疼痛知覚が増強するというfear avoidance modelを提唱
  • 痛みへの適応が良い患者は自己コントロール感が強く、情動面への障害となる疼痛行動が少ないし、痛みの受容は不安や回避行動を減らし生活の質を向上させる
  • 痛みに関する破局的思考は痛みの強さや心理的障害、機能不全に関係しており、これを評価、治療することで慢性疼痛の心理的障害や機能不全を改善できる可能性がある
  • 原因の手億的で着ない状態に心が原因という意味の心因とつけるのは誤り。
  • Victorらは痛みの質を評価するPQASの項目の因子分析から、痛みの質が、「発作的な知覚」、「浅部の痛み」、「深部の痛み」の三つに集約されることを報告
  • Davidson 種々ある慢性疼痛の評価尺度を因子分析し、7つの因子で評価するseven factor modelを提唱
  • 疼痛(pain)そのものと辛さ(suffering)とはしばしば混同して理解されているが、両者は別のものである。辛さは疼痛に比べてより広い概念で、潜在的に様々な意味を含んでいる
  • 自分の痛みに心の関与が大きいと考えている患者ほど辛さを大きく訴える
  • 痛みに付随するさまざまな問題を自覚している患者ほど、心の関与が大きいと考えており、反対に痛みそのもの以外に辛さを自覚していない患者ほど、体の関与が大きいと考えいていると判断できる