池本竜則、牛田亨宏、谷口慎一郎、谷俊一、森尾一夫、田中茂樹 表在性疼痛と深部疼痛の脳内認知機構に関する研究 fMRI study Pain Research 2006;21:117-125

  • 皮膚(外胚葉由来)の表在痛と筋肉や関節(外胚葉由来)の深部痛は異なる性質の侵害受容信号と考えられる
  • 表在性の痛み 体性局在が明確 筋肉組織に分布する線維からの侵害入力は受容野が大きくなるため、痛みの局在が曖昧
  • Korotkov 筋肉内への高張食塩水による痛みの誘発は単なる針での侵害刺激と比較し、刺激反対側の島と被殻の神経活動が有意に大きいとして、筋肉痛と皮膚痛で脳内認知機構が異なる可能性を示唆しており、痛みの発生源とその認知に関しては、未だ統一した見解が乏しいのではないかと考えられる
  • 右下腿皮膚内、筋内への生理食塩水注入による痛みの脳活動をfMRIで測定
    • 筋痛群において刺激の不快度が有意に大きい傾向があった
    • 筋痛群では刺激をやめても有意に痛みが治まりにくいという結果がみられた
    • 筋痛群では刺激反対側の島領域後方において有意な活動がみられた
  • 痛覚認知に関与する脳皮質領域
    • 頭頂葉(一次および二次体性感覚野、BA40)、前帯状回、島皮質、視床、補足運動野、前頭前野、大脳基底角領域、扁桃体、海馬、小脳
    • S1
      • ヒトの皮膚に侵害刺激が与えられた際に最初に活動する脳部位はS1とS2ー島領域であることが報告されている
      • 前脛骨筋内に痛みを誘発した際にはS1の活動はみられなかった。
      • S1領域活動が全ての痛覚認知の必要条件である可能性は低いと思われる
    • S2 頭頂下部ー弁蓋部
      • 侵害刺激のみでなく触覚や振動覚に対しても反応する
      • 筋肉痛に対しては明らかな活動はみられなかった
    • 島領域皮質
      • 同部の損傷によりつ痛覚失認症(asymbolia for pain)が報告される 痛みに対する情動反応が消失し、痛みのもつ生体警告信号に意義が失われる
      • 島領域は求心性感覚信号の持つ意義に関する識別を行っている物とかんがえられ、特に島皮質後方ー頭頂葉弁蓋部にかけての領域が痛覚計への関与が大きいと推察される
      • さらに痛み感覚に対しては、痛みのもつ情動的要素と感覚の種類を統合する部位として機能しているのではないかと考えられる
    • その他皮質領域の痛覚関与
      • 帯状回領域が痛みに認知機構に関与しているという報告が圧倒的に多い