本田哲三 慢性腰痛への認知行動療法 MB Med Reha 2008;98:107-112

  • 慢性腰痛の認知行動療法は、第2次大戦後に米国の麻酔科ボニカにより開始された multidisciplinary pain treatment group (Tacoma General Hospital)
  • 彼が1960年にワシントン大学に移るとpain clinic teamに精神科医、心理学者も加わるようになる
  • 行動療法の専門家である心理学者フォーダイスは疼痛の体験をめぐる随意行動を「疼痛行動;pain behaviors」と呼び、慢性疼痛患者での治療の対象となるのは、その疼痛行動であると考えた
  • 疼痛管理プログラムの目標
    • 痛いから何もできないという患者の否定的な認知(思いこみ)を痛いけれどやるべきことはやれるし、生活も楽しめるといった建設的態度に変える点
    • 痛みに対する無力感や破局化が堅調なケースには、評価の段階から慢性疼痛のとらえ方と対処法の存在などについて患者に展望を持たせることも必要になる
  • 施行上の留意点
    • 安易に心因性疼痛ときめつけない
    • 痛み障害的に対応する
    • チーム全体でサポートしていく
  • 慢性腰痛における脳内基盤の解明と慢性腰痛患者への影響 (脳SPECT)
    • 主な脳障害部位が同定されることにより、集学的アプローチの個別化がかのうとなる
    • 前頭前野背外側部機能低下が著しい ー まず抗うつ薬
    • 前頭前野内側部の機能低下 ー PT,OTリハ訓練による身体活動による痛みへの恐れ(予期不安)の除去が重要
    • 前頭前野眼窩部の機能低下 ー 家族関係や職場の人間関係の調整およびカウンセリングが必要
  • 近年慢性疼痛における認知(高次脳機能)機能(注意、記憶、遂行機能、行動と感情の障害、などの脳機能)障害が注目されている
    • 脳機能低下部位の明確化により、低下した認知機能を直接活性化する認知(高次脳機能障害)リハの導入が可能となる
    • 前頭前野背外側部機能低下の主な機能である遂行機能や注意機能障害にたいしては、問題解決訓練と注意訓練が有効
    • さらに活性化の経過や結果の評価も経時的な脳機能検査画像により客観的視覚化が可能となる
  • 慢性疼痛と他の精神心理的疾患(うつ病PTSD、転換ヒステリーなど)との脳内基盤レベルでの関連があきらかになることより、他疾患で確立された治療手技が慢性腰痛に援用されていく可能性がある