松原貴子、新井健一、牛田享宏 筋筋膜性腰痛症の理学療法プログラム 理学療法 2008;25(1):71-75

  • 筋筋膜痛症候群では、過敏に痛み硬く触知されるこりおよび筋スパズムが筋の一部または数カ所に存在し、運動制限や筋力低下のほか、自律神経機能障害を併発する。
  • 硬いしこりとして感じる硬結には、筋線維に平行な帯状やひも状のもの、結び目状や結節状のものがあり、圧痛硬結や収縮硬結、または索状硬結ともいわれる
  • 硬結内の圧痛点はトリガーポイントとよばれ、圧迫によって離れた場所に関連痛を惹起することがある
  • 硬結は筋の終板帯にみられ、終板の機能障害、電気的活動亢進により局所的な単収縮反応を生じている。腰背部や臀部は、頚部肩甲部とならぶMPSの好発部位とされている
  • 筋筋膜に由来する痛みの末梢メカニズムとして、筋に対する過負荷や筋障害によって終板部で機能障害が生じると、終板で過剰分泌されるアセチルコリンによって持続的な筋収縮が生じ、さらに筋内血管の圧迫による虚血循環障害も重なり、エネルギーの不足枯渇に伴い、代償的に生じる発痛物質や増感物質により痛みがおこるといわれている
  • 筋筋膜性疼痛は安静時痛は少ない
  • 筋筋膜痛症候群のコアとなる病態は硬結とトリガーポイントである
  • 筋筋膜性腰痛の理学療法介入
  • 不必要に安静や固定療法を長引かせること(長期の不動化)は、筋萎縮や筋力低下のみならず、脊髄感作などの中枢神経系の可塑的変化をもたらし、慢性腰痛への移行を助長することのなるため注意が必要である
  • 筋筋膜性腰痛の理学療法では、原因となる筋障害、筋に対する過度の負荷や疲労などを除去または改善することが第一目標
  • 組織形態的背景からも筋の過緊張(筋硬結)と循環障害が本症の主因であるため、それらを改善するためには運動療法、姿勢や動作の再教育、指導(正常な筋活動すなわちモーターコントロールの再学習)、物理療法が必要である