水村和枝 筋性疼痛の末梢性機構 日本医事新報 2996;4274:26-28

  • 筋性疼痛の神経機構についての研究は少なく、痛み治療法とも評価すらきちんとしているとはいえない
  • 筋性疼痛評価の問題点
    • Fisherの疼痛計 筋だけでなく皮膚にも痛みを誘発する可能性があるうえ、疾患部位の組織の形状により圧力の伝わり方に差が生じ、閾値の絶対値に影響を与える可能性がある
    • 皮下脂肪の9mm以下のヒトの場合には、直径2mm以上の刺激子を用いれば皮膚の表面麻酔に影響されずに筋圧痛閾値が測定できることが分かった
    • 筋全体に一様に圧痛閾値の低下があるわけでなく、特定の部位(多くの場合は索状の硬結がある部位で、その圧迫により放散痛や筋収縮が生じることがある)に強く出る
  • 遅発性筋痛モデル
    • 遅発性筋痛は、筋が伸張を受ける状態で収縮する場合に最も良く生じる。例えば山を下る場合の大腿四頭筋
    • 自発痛はほとんどなく、圧痛運動時痛が顕著である。この筋痛は運動後一日以上経過しておこり、運動後3日目からおそくとも7日後には消失する
    • 発生機序 乳酸説、筋スパスムス説、結合組織損傷説、筋損傷説、炎症説、酵素流出説
    • 乳酸説は長らく信じられてきたが、痛みのある時期には乳酸値は高くなく、これは遅発性の痛みを維持しているものではない
    • 運動前に消炎鎮痛剤を投与することにより遅発性筋痛はある程度抑制されるという報告が多いのに対し、運動後の消炎鎮痛剤の効果については否定的なものが多い。遅発性筋痛の形成にはPGは関わっているが、維持には関わっていないであろう
    • まず筋運動による筋細胞膜や結合織の破壊の結果、カルシウムが細胞内へ流入し、カルシウム汲みだしの阻害もおこり、細胞内カルシウム増大が起こる。その結果、タンパク分解酵素の活性が上昇し、筋形質の破壊が進み、破壊された筋形質は食細胞を誘発し、肥満細胞の活性化を引きおこす。これらの細胞が放出する炎症性メディエータ、サイトカイン等が浮腫や痛みを起こす
  • 伸張性収縮負荷後に生じる機械痛覚過敏は、C線維受容器の機械刺激に対する反応性増大が大きな役割を担っている