柴田政彦、井上隆弥、住谷昌彦、松村陽子、真下節 慢性痛患者の評価 麻酔 2008;57(11):1337-1342

  • 痛みの診療に携わる際に麻酔科医の不得手な点としては、痛みを引き起こす疾患の診断、痛みに関連した心理の評価、痛みによって損なわれた機能の評価などが挙げられる
  • 痛みに関連した臨床医学とは、痛覚系の解剖学や生理学などの基礎医学的な知識、痛みの原因となる疾患についての知識、痛みと関連した精神疾患や心理状態に関する知識、理学療法に関する知識など、きわめて幅の広い学問領域であり、独学で習熟することは困難である。たとえ書物から知識をえることができても、目の目の患者に生きた知識として活用することは難しい。
  • 難治性慢性痛患者の評価は多面的でなくてはならない。疾患の病態把握、神経系の異常の評価、うつ病や不安障害などの精神医学的疾患の評価、うつや不安不眠などの心理t系症状の評価、痛みによって損なわれた身体的な評価、痛みに影響をおよぼす環境因子の評価、患者本人の価値観や性格特性の評価などは難治性疼痛患者の診療においてきわめて重要である
  • すなわち、痛みを診るだけでなく、もっと重要なことは痛みを訴えている人を見られるようにならなければならない
  • 問診
  • 現病歴 初診時には患者が判断している因果関係を否定することも肯定することもなく黙って聞き、患者本人の病気や痛みに対する考え方や捉え方を知ることに役立てる
  • 痛みの評価 痛みの訴えが心理的あるいは社会的な影響を受けているかどうかにかかわらず、患者の表出する痛みをそのままきろくすること
  • 痛みの数値化は難しいが、痛み行動は測定可能である
  • MPW McGill pain questionnaireは痛みを知覚的側面と情動的側面、識別的側面から捉えており、治療法の効果判定も痛みの成分別に評価できるという特性をもつ
  • 機能評価
  • 環境因子の評価 職場の協力体制。痛みを訴えれば家庭内の業務の一部を代わってもらえるために、無意識のうちに患者の痛み行動を強化するというといった慢性痛に対するオペラント条件付けの考え方は、慢性痛に対する認知行動療法の根幹をなすものである
    • 非癌性慢性痛患者の治療の方針は、痛みの消失でなく、痛みを有して生活している患者の生活の室の改善におくことを原則とすべきである
  • 心理的評価 慢性痛患者でみられる症状の一つに不安がある。しかし、一般に抗不安薬の効果はみられないことが多く、不安の解消には痛みや疾患に対する認知の修正の方が効果的である。医療不信、自己の被害者なおdの慢性痛患者のなかで怒りの感情を持っている場合がある。そのような場合には、怒りを抑えることができなければ痛みの治療は困難である
  • 行動の評価 SF-36