痛みのケア 2

沖藤 晶子 p59 痛みの心理的なアセスメントとその治療

  • 痛みは複雑なプロセスを経た不快な感覚性情動性の体験であり、心理的な要素無しに理解することは不可能である
  • 臨床心理では精神障害も含めたあらゆる機能障害を心理的観点から観て、心理メカニズムに基づいた治療を行う
  • 痛みの心理学的アセスメント
    • アセスメントを始める前に
    • 疼痛とその障害履歴
    • 心理社会的病歴
      • 不安定で暴力的な家庭に育った人の場合、適切な対処行動を学習することなく大人になり、慢性疼痛やその障害にともなうストレスに耐えきれず、精神障害を起こしたり、薬物乱用に走ったりすることもあり得る
    • 心理的診察
  • 疼痛患者のための心理的治療
    • 行動心理学に基づいた治療
      • 古典的条件付け
        • 慢性疼痛に苦しむ患者によく見られる不安症的症状やストレスへの過敏反応なども条件づけされたものと考えられる
        • 脱条件方法の一つは、拮抗条件付け ストレス反応をおこす刺激にたいして、副交感神経を刺激する行動を行う リラクセーション(だだしい腹式呼吸プログレッシブ筋肉リラクゼーション)
        • もう一つの脱条件は方法は条件づけされた反応を消去させる方法
      • オペラント条件付け
        • 1970年代 フォーダイス overt pain behavior
        • オペラントで学習された行動は、強化刺激を得ようとして意識されているものではない
        • 痛み高度がすべてオペラント学習されたものとは限らない。うめき声を出している、という状況だけからそれが痛みから来ているのか、オペラント学習の賜物なのかを判断するのは不可能である
        • 不適切な痛み行動が患者本人や周りの人が自分の責任であるといった罪悪感をもったり、非難されているような気分になるひともいる。痛み行動が強化刺激を得ようとする意図的なものではないということ、オペラント学習がいかに私たちのあらゆる行動に関係しているかといった例を挙げることで価値観にとらわれない治療方針を組み立てていくことが大切である。
    • 臨床認知行動心理学に基づいた治療
  • 認知の歪みの10項目
    • 全か無かの思考 物事を全か無か、白か黒かの二分法で考えようとする
    • 一般化のしすぎ ごくわずかな事実を取り上げて何事も同様にきめつけてしまう
    • 心のフィルタ― 自分の関心のあることのみに目をむける
    • マイナス化思考 容易ことが見えなくなり、何でもないことや、よいことまでも悪いように悪いように考えてしまう
    • レッテル貼り ちょっとした失敗体験をもとに、それが自分の本質であるかのように自らにレッテルを貼ってしまう
    • 結論の飛躍 わずかな根拠から、思いつきを信じ込んでしまう
    • 拡大解釈(破滅化)と過小評価 自分の気になることを重要視し、反対にそれ以外にのことを小さく観る
    • 感情的決めつけ 自分の感情から現実を判断してしまう
    • すべき表現 なにをするにおいても、こうすべきだ、つねにこうあらねばならないなどと、厳しいい基準を作り上げてしまう
    • 個人化 何か悪いことが起きるとすべて自分の責任だと思ってしまう

田中秀和、本田哲三 p78 リハビリテーション科における慢性痛の治療とケア

  • TENS transcutaneous electrical nerve stimulation
    • 大径感覚線維が刺激され、小径侵害受容器からの信号が阻害されるというMelzack & Wallのgate control theoryの臨床応用として知られる
  • 心理的アプローチ
    • ラクゼーション技法
    • EMGバイオフィードバック療法
  • 認知行動療法的チームアプローチ
    • Loeser model nociception/pain/suffering/pain behavior
    • 疼痛は単に知覚体験や心理的要因に帰せるものではなく、身体ー心理ー社会的に包括的な理解が必要である
    • 基本方針 患者の痛みについての偏った認知を是正しつつ生活の活性化を目指す
    • スタッフが一致して患者の痛みに過剰に反応しない
    • 安易に心因性疼痛と決めつけない
    • 痛み障害的に対応する
    • チーム全体でサポートする