p296 牛田享宏、大須賀友晃 整形外科の視点からみた集学的治療

  • 慢性腰痛においては、いうまでもなく患者さんの生い立ちや社会生活環境、心理的要因などが大きく過重しており、単なる椎間板変性やその他の局所要因のみで説明を行うことは、治療においても誤った方向に進めていく結果になりかねない。
  • 目指すもの 痛みの除去はもちろんであるが、除去できない場合には、患者さんが痛みをある程度受入れた上で、QOLを維持した生活を送ることができる状態にもっていくことにある
  • 心理的要因が痛み症状に大きく関与しているこれらの患者さんにおいて、特徴的なことは、二次性に傷害部位の周囲に生じる筋緊張が非常に強く、それ自体が痛みの発生に関わってきていることである
  • 運動器の痛み疾患の診療は、整形外科医がしっかりと患者さんの話を聞き、触れ、痛みや訴えをできるだけ理解する(理解しようとする)ことが治療の原則である。

p305 肥田朋子 理学療法士作業療法士の立場から

  • 慢性痛が急性痛と最も異なる点は、痛覚受容器の興奮なくても痛みを感じる(認知する)ことである
  • 急性痛は痛覚受容器の興奮に始まり、脊髄や視床を経て大脳皮質にいたるが、大脳辺縁系にも広く枝をだしている。ヒトが痛みを認知する際には、過去の痛み体験を含む情動的な経験や感情との照合が、この大脳辺縁系で行われ、痛みはそれを含んだ結果として表出されている
  • いま目の前にいる患者の訴える痛みは、はたして急性痛なのか慢性痛なのかを、きちんと分類することが難しい
  • 痛みがあるからできないという考え方を、痛みがあるが、これができるという考え方に変え、痛みの変化よりもむしろ機能改善を意識させた治療方法である
  • 急性痛では痛み刺激をこれ以上いれないという点から安静(不動)がよいとされてきたが、慢性痛では反対に運動が重要視されている。
  • 能動的な運動は、積極的に筋を収縮弛緩させるので、受動的な運動よりも筋緊張を変化させうる重要な手段である
  • 急性痛であろうと慢性痛であろうと、痛みを訴える患者の痛みには情動要素が多分に含まれている