p 206 池内昌彦、牛田享宏 変形性膝関節症の臨床最前線

  • 変形性膝関節症における疼痛の発生源
    • 関節軟骨と半月板の無血行野を除きほぼすべての組織に疼痛伝達に携わるAδやC線維および自由神経終末が分布する
    • 多くのOA膝の疼痛源は5mlのブピバカインが浸潤しうるような関節内組織に限局している
    • 膝OAの疼痛源として関節近傍の筋肉、腱、筋膜、滑液包などの可能性もある
    • OA膝の疼痛源については関節内組織とともに、関節外組織の関与もあるようである
    • Dye
      • 自分の膝に無麻酔で関節鏡を行い、プローブで各組織をさわりどこが痛むか検討した
      • 最も痛みに敏感な組織は、靭帯付着部、滑膜、膝蓋下脂肪体であり、関節軟骨はいたくなかった
      • 生理食塩水を注入して骨髄内圧をあげると堪え難い痛みを生じ、減圧すると速やかに痛みは消失
    • 炎症性に増生した滑膜や断裂半月板に隣接した滑膜において強い痛みを生じる傾向にある
      • 炎症性に増生した滑膜組織では組織pHが産生に傾くため局所麻酔薬が効きにくいことや、炎症にともなう末梢感作により疼痛閾値が低下していることが関係
  • 画像診断とOA膝の痛み
    • 画像でほとんど変化がないのに強い痛みを訴えるもの、逆に画像変化が高度であるにもかかわらずあまり疼痛を訴えない者などが多いのも事実
    • OA膝の慢性に経過する疼痛に伴う中枢性の感作の評価は研究段階
  • 軟骨が摩耗していても、滑膜炎が少ない、不安定な組織片がない、関せいつ不安定性が少ないといった者が疼痛がおこりにくい
  • 最近のMRI画像研究によると、痛みの強いOA膝の特徴は、骨髄浮腫、関節水腫、滑膜炎、滑液包炎などの末梢組織の炎症を反映する所見を有する
  • 今後のOA膝治療の方向
    • 患者が望む医療ではいたみのある関節を痛みのない状態にすることが究極の治療目的であり、軟骨を増やすことや変形を治すことが治療の最終目標ではない
    • 神経系のコントロールに重点をおいたOAの治療を考えていく必要がある