荻野祐一、根本英徳、斉藤繁、後藤文夫、乾幸二、柿木隆介 痛みの内的体験ーどうして心が痛むのか 神経内科 2007;67(5):416-419

  • 痛覚伝達経路 大別して2経路
    • 内側系 脊髄後角第I層ー視床VMpo核-島や辺縁系(lamina I-VMpo-Insula pathway) 痛みの感情情動面や自律神経系
    • 外側系 脊髄後角第II層-視床VPL核-第一次体性感覚野(lamina V-VPK-SI pathway) 痛みの判別的側面(痛みの強さや場所)に関与
  • fMRIによりSI,SII,島,帯状回など複数の大脳皮質領域が痛覚受容に対して活性化されることが明らかになる 痛み関連脳領域 pain-related brain regions or pain matrix
  • 痛みの共感 単に他人の痛みを共感するのみでは痛みに感情面に関する痛み関連脳領域は活動しないが、さらに自分の痛みとして想像した場合は、それらに加えて痛みの感覚的、判別的側面に関する痛み関連脳領域の活動が加わってくる
  • 痛みを連想させる画像を見せて自分の痛みを想像してもらい、そのときの脳活動をfMRIを用いて計測し、他のnegativeな感情である恐怖と安静感情と比べた
    • 自分の痛みを想像してもらった時は複数の痛み関連脳領域の有意な活性化を認め、あたかも実際の痛み刺激を与えられたかのような脳活動を示した
    • 痛いという感情は組織障害に起因を限定するものでなく、痛みの想像といった痛みの内的体験によっても同様の脳活動を示すことが明らかとなった
    • このことはまさしく痛みのもつ多面性を反映すると同時に、痛みの感情の脳活動が痛み関連脳領域の主要活動を占めていることを示している。
    • この痛みの感情の脳活動は患者のうつ状態や、彼らの訴える主観的な痛みの程度と相関していることが明らかになった
    • 社会的な疎外を受けている時は、実際に痛み刺激が与えられなくても身体的な痛みと類似の痛み関連脳領域が活動する
  • Koyama 少ない痛みを予想している時は、主観的な痛みの強さと痛み関連脳領域の活動の両方が、実際の痛みよりも抑制されていることをfMRIでしめした