大道裕介、熊澤孝朗 痛みの病態生理学 理学療法 2006;23(1):13-22

  • 一次痛
    • 鋭い識別性に富んだ痛み 空間的時間的な識別性のよい痛み
    • 閾値機械受容器
    • Aδ線維ー脊髄後角I層ー二次ニューロンの脊髄視床路を上行-視床の外側腹側部で三次ニューロン-皮質感覚野
    • ニューロンの乗り換えは3回と少なく、特急列車的に大脳に達する
  • 二次痛
    • ゆっくりと始まり、強い持続性を持ち、広がるような不快感を招来する鈍い痛み。識別性の乏しい
    • ポリモーダル受容器
    • 延髄、中脳、視床下部大脳辺縁系と各駅停車で数回ニューロンを乗り換え大脳へいたる
  • polymodal受容器
    • 機械的、化学的、および熱のいづれにの刺激にも反応
    • 繰り返しの刺激に対しての再現性悪い
    • 皮膚では無髄のC線維
    • ポリモーダル受容器の細胞体は複数の神経ペプチドを産生ー末梢へ輸送ー動脈や静脈に作用し、血管拡張に伴う血流増加にひきつづいて透過性の更新を引き起こし、発赤や浮腫を招く
    • 原始性ゆえに可塑性変容をおこしやすい
  • 痛みの悪循環
    • 筋緊張の亢進ー筋性防御
    • 持続的筋収縮により筋内の毛細血管は虚血状態となり、痛覚増強物質などの炎症メディエータを誘導し、侵害受容器の興奮を惹起する
    • いずれも筋のリラクゼーション、こう縮の解除、関節からのインパルス増大の除去が可能であれば、いたみの悪循環を回避できる
  • 慢性痛症
    • allodynia 触覚刺激にもかかわらず痛みを感じる Aβ線維を介する触覚刺激によって誘発される
    • 痛覚増強 痛覚入力に対する反応が増強
    • extraterritorial pain 痛みが障害部位を越えて広がる
  • 急性痛と慢性痛症の決定的な違いは、慢性痛症の痛覚系の構造そのものが変容し、神経回路の混線状態を来たし、生理的には説明のつかない病態痛を呈していることである。その発症の背景には不要有痛みの放置による持続的痛み入力がある。末梢からの持続的な侵害性入力は脊髄内での痛覚増強機構を誘導し、痛覚系に可塑的な変容をもたらす。難治性の慢性痛症を作り出さないために、痛覚増強の長期的誘導に関わる骨格筋、関節、靭帯からの痛みをやわらげることは、理学療法士に課せられた大きな使命である。

辻下守弘 痛みの行動科学 理学療法 2006;23(1):28-34

  • 積極的な医学アプローチが施されない慢性痛を抱えた人々は、緩和されない痛みを長時間持ち続けることになり、それに対する怒りや攻撃性が痛みへの固執を強め、さらに痛みの症状を増悪させるという悪循環に陥ることも少なくない
  • 痛みの悪循環
    • 自立した生活をする能力に支障を来す、社会での役割を失う、職場や家族など周囲の人々に影響を及ぼす
    • 医療への依存が高まる、社会問題となる
  • 行動科学
    • 人間のさまざまな行動を緻密な観察や精巧な尺度をつかって測定し、予測可能な知識とすることで、人間個人、集団、あるいは社会の行動変容を計画的に行おうとする学問
    • 生物心理社会モデル 事象を単一原因で説明するということをせず、必ず複数因子で考える。あらゆる事象を多様な原因の相互作用の結果生じると考える
  • 1965 Melzack & wall, gate control theory
    • 痛みには複雑な要因が相互に作用している 痛みにはもっと高次元な脳機能である価値判断さえも影響する
  • Loeser 多面的モデル
    • nociception, pain, suffering, pain behavior
  • Forcyde, pain behavior 慢性痛の場合は痛み行動が苦悩を伝えるサインとなることが多い
  • 痛みとストレス
    • ストレスが情緒反応を介して痛みの閾値にも影響を及ぼすことは容易に想像できる
    • ストレスの程度は、ストレス源とストレス耐性によって決定される
    • 職業性腰痛とストレス タイプ A行動特性 常に時間的切迫感をもち、せっかちで必要以上の仕事をこなそうとする人
  • 学習理論と痛み行動
    • 学習理論 行動論的な考え方と認知論的な考え方
    • 人間の行動は、先行刺激ー行動ー後続刺激という三項強化随伴性によってコントロールされる ABC分析