医学のあゆみ 223;(9) 特集 難治性疼痛と闘う 3

福井弥己郎、岩下成人 MRスペクトロスコピーによる慢性疼痛患者の評価 医学のあゆみ 2007;223(9):773-777

  • MRスペクトロスコピー (magnetic resonance spectroscopy)
  • Coghill fMRI
    • 痛み刺激をより強く捉える群ではSI(一次体性感覚野), 前帯状回(anterior cingulated cortex),前頭前野(prefrontal cortex)の活性化がよりつよく生じる
  • Witting
    • ロディニアを呈する神経因性疼痛では痛みの識別的側面に関与する外側系の機能が低下し、痛みの情動面、認知面に関与する内側系が強化され、脳内レベルにおいて伝達機能の変化が起こる可能性を示唆
    • CRPSの治療過程で、痛みの改善に伴い、外側系のSI,SIIの機能回復が見られる
  • Koyama
    • 痛み刺激が大きいと予測すると、視床前頭前野、全帯状回などの活性化が増大
    • 痛み刺激が小さいと予測させると、前帯状回などの活性化が減少
    • 心理的な作用が痛みの捉え方に大きく影響を及ぼすことを示唆
    • 帯状回は痛みの認知、情動面、痛みの予知などに関与すると考えられており、慢性腰痛患者では前帯状回、内側前頭前野が萎縮していること、視覚刺激によるいt毎の疑似体験で前頭前野や全帯状回が賦活化されると、痛みを予知すること前帯状回が賦活化されること、プラセボの投与で視床帯状回が賦活化されることなどが報告されている
    • 慢性疼痛患者に大脳皮質の電気刺激をおこなうと前帯状回前頭前野の血流が増加し、痛みが緩和されることが報告されている。
  • 著者らの研究
    • 頭前野あるいは前帯状回においてNAA濃度の低下がみられた患者では、ペインクリニック的アプローチのみならず、心療内科的アプローチも必要
    • 慢性疼痛患者では繰り返される痛み経験のなかで、実際の痛み刺激とは別に脳内で情動的な痛み経験が繰り返されていることが推察されている
    • 慢性疼痛患者では原因にかかわらず、心理社会的バックグラウンドが存在し、情動や認知的側面が痛みを修飾していることがしばしあ認められる
    • MRSで得られた客観的データを慢性疼痛患者にしめすことは、患者への心療内科的アプローチの必要性を説明する場合に役立つ