宮岡等、鈴木志麻子 慢性疼痛はどう診断されてきたか 精神科治療学 2000;15(3):243-250
- 痛みというのは患者の言葉を通してしか評価し得ない症状である,患者の言葉によって評価するしかない
- Mersky 痛み 組織病変と一次的に関係づけられるか、組織病変の観点から説明される不快な経験
- 急性疼痛 交感神経系の活動が優位
- 慢性疼痛 身体病変に見合わないような痛みが持続的に訴えられる状態
- 心因性という用語 ICD-10 言語の違いや精神科的伝統が異なると、心因性の意味合いはことなってくるので、この用語はカテゴリーのタイトルとしては使われていない。教科書などにいまだに登場することがあるが、それは診断者が明らかに人生の出来事や苦境を、障害の成因に重要な役割を果たしているとみなしていることをしめすと受け取るべきであろう
- DSM-III 心因性疼痛障害 psychogenic pain disorder
- DSM-IIIR 心因性という用語が姿を消し、身体表現性疼痛障害somatoform pain disorderという診断名が現れた
- DSM-IV 疼痛性障害 pain disorder
岡島佳朗、加藤敏 慢性疼痛の発症要因と類型分類 精神科治療学 2000;15(3):251-259
- 慢性疼痛は生理学的機構に加え、心理的、行動的メカニズムを含む点で急性疼痛とは質的異なる
- Loeserのモデル
- 組織損傷におり引き起こされる知覚神経への入力である痛み知覚 nociception
- その入力の中枢神経での感受と理解される痛み pain
- 中枢神経のnegativeな情動反応として生じる苦痛 suffering
- その結果であり、唯一客観的に認識可能な痛み行動 pain behavior
- DSM-IIIR 心理的要因が病因的に関わるという基準は取り除かれ、すくなくとも6ヶ月以上の痛みへのとらわれというきわめて中立的な記述概念にとどまった
- 慢性疼痛の諸要因 抑うつ、分裂病、人格特性、対人関係、社会文化的影響
- 抑うつ
- 人格特性
- Engel 痛み傾向をもつ患者 pain-prone patient
- 感情を言語化できないアレキシサイミアをあげることができる。アレキサイミアは自らの感情を認知できず、言語的に表出することもできないため身体症状を呈する
- 自己愛傾向 慢性疼痛を医療者に執拗に訴える患者は世間からみを引き、自分の体のみに注意がいき、これが最大の関心事になっている
- 対人関係
- 最も重要なのは家族関係。疼痛患者と家族の間で、痛みがコミュニケーションの役割を担うことがある
- 患者の痛みの訴えとこれを聞く家族との相互関係がみつであることがかえって疼痛を円環的に持続させ、治療抵抗性にしてしまう
- 痛みを和らげる表面的な対応を続けることが、患者の痛み行動の正の強化子となり、病者役割sick roleを固定化することは十分に考えられる
- 臨床の場において医療者は病者の体の疼痛の訴えの背後に、病者の心的苦悩や不安を読み取る必要がある
- 慢性疼痛の分類
久保千春、小宮山博朗 心療内科における慢性疼痛の治療 精神科治療学 2000;15(3):371-376
- 痛みは、組織の損傷の有無にかかわらず生理的レベルの感覚的要素をきわめて個人的主観的に認識することによって体験される近くである
- 痛みへのアプローチには、神経ブロックをはじめとする身体的治療(侵害刺激を除去あるいは軽減しようとする治療)だけでなく、個人の認知や情動、環境、行動と体との関連を身体とする心身医学的方法が必要となる
- 慢性疼痛の原因を一元的に理解することは困難なことが多く、患者によってはなぜ訴え続けられているのかを患者の語る病歴や周囲の家族や医療スタッフの反応性から詳細に検討していくことが重要である。つまり発症前の適応状態や発症因子、持続因子、増悪因子、改善因子を具体的に検討していく必要がある
- 慢性疼痛の分類 九大