治療 2003;85(7)プライマリケアのための痛みの見方

表圭一、並木昭義 高齢者の痛みの特徴とその対策 臨床と研究 1998;75(7):1551-1555

  • 高齢者の疼痛を増強する要因 社会的孤立感、孤独感、不安、環境への不適合、抑うつ、家庭内における患者の役割
  • 家庭内での仕事や役割がない状態では痛みに対する気持ちの集中が常に存在する。ここに一つの痛みの悪循環が成立してしまうことになる
  • 趣味を持っていなければ生活の目的が痛みと対峙するようになり、目的のない生活を恐れるようになるとも考えられる。
  • 慢性疼痛を有する高齢者は、抑うつ睡眠障害精神遅滞、食欲不振などに加え、活力興味集中力の喪失を訴えるようになる
  • 高齢者は、夫や妻との死別、または友人、仕事、家、健康、独立心そして自分に対する価値観を失うことなどに直面する
  • 高齢者の場合、老化に伴う知的精神面および患者を取り巻く環境背景の把握は、疼痛症状に大きく関わっていることが多い
  • 患者の疼痛に理解をしめしてくれる人がいなかったり、家庭内で孤立していることにより病院へすべておしつけられている患者もいる
  • 高齢者では痛みがあると体を動かさないため、四肢の筋肉の萎縮が生じ、寝たきりとなる。このような状況になると、その心身の苦悩は切実である。
  • 高齢者は、慢性疼痛に関与する生物学的、心理的そして社会的な要因を効率に抱えていることから、疼痛管理における高齢者に対する特別な関心がもっと高くならなくてはならない

久保千春、早川洋、小宮山博朗 慢性疼痛の診断と治療 臨床と研究 1998;75(7):1547-1549

  • 慢性疼痛の定義
    • Bonica 麻酔科 急性疾患の通常の経過あるいは外傷に治癒に相当する期間を一ヶ月以上超えて持続するか、継続する痛みの原因となる慢性の病理学的プロセスと一体となっている疼痛、もしくは数ヶ月から数年の感覚で反復する疼痛
    • 1980 DSM-III 心因性疼痛
    • 1987 DSM-IIIR 心因性という用語がきえて、身体表現性疼痛障害
    • 1994 DSM-IV 疼痛性障害
  • 慢性疼痛の原因 Bonica
  • 慢性疼痛の評価 VASとともにdisability(生活障害)評価尺度が有効、痛みに対する周囲の反応パターン
  • 慢性疼痛の分類 著者
    • 精神生理学的疼痛  強い情動ストレスが自律神経系や内分泌系の反応を通して骨格筋の攣縮や局所の血管収縮、消化器機能の失調、発痛物質の放出などを引き起こすことで生じる疼痛
    • うつ病型疼痛
    • 回避型疼痛 痛みの出現は基礎疾患の増悪の兆候であるとというあやまった理解のために、通常の動作や活動を過度に回避したり、軽度の疼痛発現で混乱して過剰な疼痛処置をもとめる
    • オペラント学習型疼痛 疼痛行動の出現に伴って患者にとって何らかの快適な結果報酬が生じるために持続
    • 思考障害型疼痛

宮崎東洋 complex regional pain syndrome (CRPS) type I & II 臨床と研究 1998;75(7):1533-1536

  • SMP sympathetically maintained pain 交感神経ブロックによく反応する痛み
  • SIP sympathetically independent pain 交感神経ブロックに無反応な痛み
  • ABC synd (angry backfiring C-Nociceptor syndrome) 交感神経ブロッックによりかえって増悪する痛み
  • RSDといっても必ずしも交感神経依存性でもないし、かならず異栄養症が生じる訳でない
  • CRPS
    • 局所に生じた損傷に引き続いて発症する病態をいうが、通常予想される創傷治癒の過程を超えて持続し、たびたび著明な運動機能低下を起こし、時間と共に様々に進行する症候群

永田勝太郎 痛みの心身医学的治療 臨床と研究 1998;75(7):1495-1499

  • 慢性疼痛では患者は全人的にさいなまれている
  • 医療不信が潜在すると、患者は医師に不信感を抱きながら、かつ医師に依存しなければならないというアンビバレンツに苦しんでいる
  • 禅の言葉 啐啄 そったく
  • 気を得て両者相応じること  治療者である医師の治したい気持ちと、治りたい患者との間で、まさに啐啄がおこる
  • 治療者はまず患者の疼痛を受容し、患者を全人的に支え、よくなれるという保証をあたえなくてはならない