p119 三木健司、行岡正雄 慢性疼痛、線維筋痛症の治療戦略

  • 慢性疼痛は痛みを感じる末梢の受容器レベルや疼痛の伝達レベルや大脳での認知レベルなどあらゆるレベルでの異常からその疼痛が発生していると考えられるが、現時点で治療に関してわれわれがもっとも利用しているのはいわゆる下行性抑制系である。
  • 関節炎の痛みの原因
    • 組織損傷、神経障害、精神的なストレス
  • 関節炎患者の痛みを増幅させる因子
    • 末梢性感作 痛みの閾値が下がり、痛みを感じやすくなる
    • 中枢性感作 末梢での組織損傷や炎症の程度が激しくかつ長くつづくと、それが伝達される中枢に機能的な変化が生じ、正常な伝達が中枢で誤って解釈されいたみとして感じられるようになる
  • 筋骨格系の神経支配はAβファイバーが優位 これによって伝達される刺激はいたくない刺激
  • Aδファイバー,Cファイバーは関節包、靭帯、半月板、骨膜などに多く分布し、これらによる伝達では侵害刺激が伝えられる
  • 関節炎ではsleeping nociceptorが活動し始め、Aδファイバー,Cファイバーを介していたみが伝わる
  • ノイロトロピン セロトニンの3番目のレセプターのアゴニストとしての効果が注目されている
  • 線維筋痛症の痛みの本態ははっきりしていないが、中枢性感作が原因のひとつではないかとかんがえられている
  • 慢性疼痛、線維筋痛症の外来をおこなっていると患者さんのもつバックグラウンドに深い苦悩が隠されていることに驚かされる
  • 下行抑制系が痛みの調節機能あり 治療の際には下行性抑制系に作用するセロトニンノルアドレナリン、NMDAなどの作用を熟知する必要がある
  • 臨床家として、著者が心がけているのは患者さんの痛みをとるのは、決して薬でなく、患者さんの心と患者を思いやる医療者の心であるという気持ちであるということである

p133 村上正人 線維筋痛症に代表される慢性疼痛をめぐって

  • 慢性疼痛が他者から受容共感されにくいともあり、その対応には全人的なアプローチが必要
  • 痛みの修飾要因
    • 交感神経の興奮時は痛みを感じにくい
    • 痛みに対する注意集中、精神的とらわれは痛みを増強。別の症状に気が向いているときは痛みを感じにくい
    • 不安や落ち込みの改善、relaxationは痛みの閾値を上げる
    • 積極的意欲的行動は痛みを軽減
    • 予期不安や恐怖心があると痛み増強
    • 心身の疲労状態は痛みの閾値、耐性が低下
    • 他人に対する怒り、敵意、攻撃心、腹立ち、恨みなどの表出が十分になされず、それらが内向して自罰傾向になると痛みが増強
  • 慢性疼痛のために筋緊張、血管攣縮などによる血行動態の障害が引き起こされ、それがさらに痛みを増強させるという悪循環が形成される
  • SSRI,SNRI 下行性疼痛抑制系を刺激することで疼痛閾値を上げる機序により痛みを軽減
  • 認知行動療法によるアプローチ
    • 不合理な信念体系の基本的なスキーマ
      • 全か無の思考、べき思考、過度の一般化、独断的推論、自己関係づけ、破局的な見方
    • 治療者の患者の合意と努力で解決指向的に
    • 自らに認知行動パターンへの気づき、そうなっと根拠と理由の問いかけ、他の考え方、行動を選択する可能性を探る、行動リハーサル、モデリング、段階的タスク