p93 牛田享宏 慢性疼痛の基礎的検証

  • 整形外科領域における痛みの概念
    • 元来原因となっている局所所見(神経圧迫、骨折、関節の変形などの器質的要因)の問題が小さくなったり、無くなっているにも関わらず痛みが続く状態
      • 性神経因性疼痛(CRPS,脊髄損傷後の痛み)、廃用症候群,failed back syndromeの一部
    • 原因となっている病態を治療し得ない状態が持続するために、いわゆる急性痛が長期間にわたって切り返し引き起こされているものがある
      • 癒着性くも膜炎、変形性関節症、慢性炎症RA
  • 関節拘縮の病態においては病的状態に陥った感覚受容器が分布するため異常な信号を中枢に送っていることが推察され、これも後角細胞の機能的変化の要因になっている。
  • 慢性の神経因性疼痛患者においては、繰り返される痛みの経験の中で実際に痛み刺激が局所から加えられなくても、脳内で情動的な痛み経験を繰り返していることが推察される
  • 整形外科の一般的な痛みにおいても心理的要素に伴う不快な経験が繰り返されるとその結果として、脳の機能的変化に加えて器質的変化が引き起こされる可能性を示すと考えられる。

p103 伊藤誠二 神経損傷の生化学的分析

  • 痛みは、告知がなければ、痛みを感じる本人以外はその存在を知り得ないもので、その本人が虚偽の告知をしようととする意志のない時、言語またはこれに代わる他人の判断できる方法をもって、他人に疼痛のあることを告げた時、その本人の持っている意識内容を疼痛とすると定義される
  • 神経因性疼痛は、痛み本来の意義有用性は喪失しており、慢性痛はこのような病的な痛みを指す
  • 痛みが長引くと、往々にして自律神経系の活性化や情動反応に変化が認められ、感覚認識成分と情動成分が混在した状態となる
  • 唐辛子に反応する受容体TRAV1が生体に備わっている熱に対する侵害受容器であることが分かった
  • われわれは神経型NOSにより産生されるNOが神経因性疼痛のマーカーになるのでないかと期待している