ペインクリニック5

高橋ク美子 慢性疼痛とリハビリテーション ペインクリニック 2007;28:S224-232

  • 慢性疼痛患者の特徴で医療への過剰な依存
  • 長期プログラムの対象者
    • 錯綜した心理社会的問題のため生活が破綻している
    • 本人の未成熟な自我が競争社会に直面し、対応困難となった結果、逃避として選択される病者役割
      • 虐待経験のある患者はボディイメージの歪みや自虐傾向、身体感覚の鈍麻を含めた訴えを持つ
    • 患者が医療者との治療関係で少なからず傷ついており、医療依存と対照的な医療への不信をもっている
    • 感情の抑圧、反応のパターン化、極度の心理両面にわたる過緊張
  • 長期プログラムの特徴
    • 受け身的な身体的治療にこだわる患者に、心と身体の双方向へ同時に多職種で関わることによって、主体的なプログラムへの参加を目指す
    • 明確な治療方針を提示し、治療契約を結ぶ
    • 身体的な疼痛部位に集中していた本人の意識が生活、暮らしに開かれていく
      • プログラムの当初から生活への直面化を促す
      • 工夫によってできるADLと、現在かろうじてしているADLに区別について明確にされる
  • 最終目標
    • 痛みを取り除くことではない。それぞれの患者が納得できる形での社会復帰
  • 昨今は経済効率が優先される結果、通常の医療の枠組みでの慢性疼痛への対応はますます困難になっている
  • 現時点で慢性疼痛は高次脳機能障害の中でわれわれが10番目の障害と呼称してきた、感情と行動の障害の範疇に入るのではないか

白井誠 慢性疼痛とリハビリテーション ペインクリニック 2007;28:S233-240

  • 慢性疼痛患者 疼痛による体幹四肢の屈曲内転パターンにたいして、分離運動、分節的運動を行い、四肢の自発運動を促し、日常生活に必要な機能的動作の獲得を進める運動療法が有益である
  • 患者は痛みのために逃避的反応が優位になっており、手であれば体幹に上肢を近づけて固定している。姿勢運動パターンでは屈曲内転パターンが優位の状態である。筋緊張では屈曲内転筋群が過緊張を示しており、屈筋内転筋支配の運動神経が過剰興奮していると解釈できる。逆に拮抗筋の伸展外転筋においては活動の低下が見られ、興奮の低下が予想される。つまり、主動作筋、協同筋、拮抗筋の協調した運動が阻害された状態にあるといえる

水品朋子 慢性疼痛とリハビリテーション ペインクリニック 2007;28:S241-249

  • 3点に対してアプローチ
    1. ADLの中での正しい身のこなし方を習得する
    2. 坐位および立位での耐久性を高める
    3. 創造的な活動や仲間付き合いの愉しみを体験する
  • 毎日の生活で繰り返す動作が楽に行えることで、日常の負担が大幅に軽減する
  • 過剰な安静が必要な筋力も低下させ、痛みの悪循環を生む場合がある
  • 結果は数値化できるように工夫する
  • 慢性疼痛患者はとらわれが強い
  • 結局認知の転換をはかれない例もある

矢島直、花岡一雄 疼痛患者の教育指導とその実際 ペインクリニック 2007;28:S250-257

  • 身体、心理、社会的医療モデル
  • 感覚sensory,感情emotion,精神mind,行動behavior,社会social environment
  • 上記の5つの要素の相互作用
  • 精神と行動に重点をおいて患者を教育指導する
  • 疼痛の為にQOLが低下したと嘆き悲しむ代わりに、疼痛があってもこれだけのことができると前向き思考をするように指導する
  • 自己破壊的ライフスタイルから脱却するようにセルフコントロールをすることの重要性を機会があるごとに指導