ストレスと臨床

medical onlineより雑誌 ストレスと臨床で、慢性疼痛の関連論文を手に入れた。残念ながら2006/8で休刊のもよう。

村上正人、松野俊夫 慢性疼痛 ストレスと臨床2002;12:25-29

  • 国際疼痛学会の痛みの定義
    • 組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このような障害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚や情動体験
  • 痛みには感覚としての痛みと感情としての痛みの2面性がある
  • 慢性疼痛とうつ
  1. 慢性疼痛発症前からあるうつ
  2. 慢性疼痛発症以降に出現するうつ
  3. 疼痛が長引くに従い引き起こされるうつ
  • いづれのエピソードが背景にあるにせよ、事故怪我病気などで痛みが生じると、その痛みのために筋緊張、血管攣縮などによる血行動態の障害が生じ、それがさらに痛みを増強させるという悪循環が生じる
  • 心療内科領域では臨床各科を経由して受診する疼痛患者が少なくないが、それらを機能性の筋肉痛という視点で見ると、その痛みのメカニズム、心身相関がよく理解できることがある。
  • RAでは身内や親しい人との死別や離別など、生活上のストレスや情動ストレス、感情的な変動が契機となり痛みが増悪するRAの症例をよく経験する。この場合諸関節の腫脹発熱変形はの増悪は伴わず、検査所見も増悪はない。うつなどの心理的ストレスの関与か
  • 慢性疼痛の治療のためには不安、緊張、うつへの対応が必須
  • 心理的アプローチ
    • 共感をもって痛みを受容し(受容)、つらい治療期間を励ましながら支え(支持)、痛みが必ず緩和、改善することを信じ(保証)、そのためのストレスの対処法、生活の工夫の必要性などについて説明する(説得)というプロセスを、毎回の診療場面で繰り返すことが重要である。

仙波恵美子 慢性疼痛はどうして生じるか ストレスと臨床 2005;24:4-7

  • 慢性疼痛には、組織の傷や炎症が治癒したにもかかわらず中枢神経系の可塑的変化のために持続する、あるいは反復する痛みや、神経因性疼痛が含まれる。神経因性疼痛の多くが慢性疼痛に移行する
  • 過敏症
    • 痛覚過敏 hyperalgesia 痛覚閾値が低下し痛みをより強く感じる
    • ロディニア allodynia 正常では痛みを感じない刺激、例えば衣服の接触などで痛みを感じる
  • 痛みの中枢回路
    • 脊髄から脳への痛覚伝達系は、視床外側部を経て体性感覚野S1,S1にいたる外側系と 
    • 痛みの識別に関与
    • 視床の内側核群を経て前帯状回(ACC),島皮質(IC)に終わる内側系に分けられる
    • 痛みの情動認知的側面に関与
  • 急性のストレス刺激は鎮痛に作用 ex 戦闘中や運動競技中に受傷してもあまり痛みは感じない
  • 慢性的なストレスが痛覚過敏を引き起こす
  • 痛み刺激により、DRGや脊髄後角でMAP kinase系、JAK-STAT系などが活性化され、CREBなど転写因子の活性化が種々の標的遺伝子の転写を起こす