• 慢性疼痛は急性疼痛とは病態が大きく異なる。ニューロンの変性やイオンチャンネルやシナプスにおける様々な変化といった生理的な違いのみならず、生理心理環境の3つのシステムによる悪循環の連鎖が病態を形成する点が慢性疼痛の特徴の一つである。
  • 慢性疼痛の病態は身体面のみの理解では不十分なことが多く、心理行動環境コミュニケーションなどの多面的評価が必要な疾患である
  • 慢性疼痛患者は身体症状への注意集中がおこりやすい一方で、感情や心理への気づきに乏しいことが考えられた。
  • また症状によって責任回避や他者へのコントロールを達成し、心理療法が奏功しにくい傾向がみられることから、治療者に不全感や怒りなどの陰性の逆転移を引き起こしやすいことが予想される。

長井信篤、成尾鉄朗 慢性頭痛(心身症)の器質的疾患の有無と心理・社会的、機能の全体的評価の関連性 慢性頭痛 2005;24(1):85-88

  1. 一つまたはそれ以上の解剖学的部位における疼痛が、既存の身体的検査と治療にも関わらず、6か月以上臨床上の中心をしめている
  2. その疼痛は、臨床的に著しい痛みの自覚と愁訴、それによる日常生活の活動の制限ないし障害を引き起こしている
  3. 心理・社会的要因、または心理・社会的要因と身体的要因の両方が、疼痛の発症、持続または悪化、重症度に重要な役を果たしている。
  4. 気分障害や不安障害が、疼痛に先行あるいは同時発症したり、その結果として発症する場合もある
  • 行動論から見ると、準備因子(性格、行動特性、環境、ストレス状況)がある状態で、慢性疼痛の発症因子として、疾患、事故、後遺症が関与する。そして、疼痛が発症する以前、発症時、あるいは発症後に心理的要因や社会的要因が深く、強く作用する。これら心理・社会的要因は、慢性疼痛の強化因子(周囲の対応、疾病利得など)や持続因子(心理状態、周囲の対応、経済問題)などとして作用し、広義の痛みの悪循環を形成していくのである。

水野泰行、福永幹彦、中井吉英 慢性疼痛患者とその他の心身症患者との比較 治療にともなう心理的変化の前向き研究 慢性疼痛 2005;24(1):89-94

  • 2004 服部 18300人を対象とした全国規模の調査 18歳以上の慢性頭痛の有病率は13.4% そのうち45%が整形外科に通院。疼痛専門医へは0.8%
  • 慢性疼痛患者には多因子が関与、様々な病態が含まれているので、慢性疼痛というより慢性頭痛症候群と表記した方が適切と考える

佐藤幹代、高橋正雄、本間真理、芦沢健、池田望 慢性疼痛患者の痛みへの対処方法 慢性疼痛 2005;24(1):173-182

  • くろぱんの会
    • 森田療法的接近を用いた精神集団療法
    • 疼痛を除去する治療から疼痛へのとらわれを治療対象とし、疼痛性疾患を障害としてあるがままに受容して、人間性の回復をめざす
      • 様々緩和法法を複数用いる
      • 代替療法、民間療法を用いる
      • 語りを通して痛みに対する認識を変える