細井昌子、久保千春 疼痛性障害 痛みと臨床 2004;4(4):289-295

  • 痛みは中枢神経でさまざまな修飾をうけることが明らかになったおり、プラセボ鎮痛や気晴らしの痛みへの効用を示唆する科学的根拠が示されつつある
  • 疼痛性障害の治療の対象は過度の疼痛の訴えである疼痛行動である
  • 器質的機能的心理的病態の複合した病態である疼痛性障害に対する治療は、各次元での身体的治療を十分施行したうえでの認知行動療法が有用である
  • 2001-2010 アメリカ decade of pain
  • 国際疼痛学会の痛みの定義 1994
    • 痛みとは組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このような障害を表す言葉をもって述べられる不快な感覚、情動の体験である。
    • 痛みが感覚体験のみならず、情動体験をふくむ不快な混合的体験であることが重要
  • 末梢の自由神経終末から細い神経線維(Aδ線維あるいはC線維)が脊髄後角に情報を伝え、その一次線維と脊髄後角でシナプス結合した二次線維が反対側の脊髄の前外側索を上行し、脳幹で外側系と内側系に分かれる。外側脊髄視床路は視床の後外側腹側核に入り、大脳皮質の体性感覚野に達して痛みの識別的側面を担っている。
  • 痛みの修飾でとくに重要であるのは、脳から脊髄後角にかけて、2種類の下行性疼痛抑制系が存在し、その個体に疼痛閾値を変化させている
  • 疼痛性障害と診断するためには、身体的な病態の発症や経過を理解するのみでは不十分で、心理社会的背景が痛みの発症、持続及び増悪にどのように関与しているかを詳細に把握する必要がある
  • 疼痛性障害と診断された患者は、患者の個人的な体験である痛みを周囲にわかってもらえないという疎外感から交流の障害がおこっていることも多く認められる。
  • 患者の苦痛を緩和できないという治療スタッフの無力感や罪悪感が治療スタッフの心のいたみとなり、鎮痛薬や麻薬などが大量に投与されていた症例もある。
  • 強迫性人格障害と診断されうる症例や、診断がつけられない程度に強迫傾向をもつ症例でも、何事をするにも過度になって、筋骨格系の機能異常が遷延していることが、詳細な行動評価であきらかになることあり
  • 家族との葛藤が痛みと関連していることも多く、最終的に適応するべき家庭環境を調整し、症例に応じて集中的な家族療法を加えることが重要となる

端詰勝敬、酒巻真澄佳、安達明里 身体化障害 痛みと臨床 2004;4(4):296-302

  • 現代医学がもっとも苦手としているのが、検査で異常が認められない、または検査結果と症状が解離したよくわからない症状である
  • 自律神経失調症不定愁訴といわれる症例の多くは、感情障害や不安障害などの精神疾患。いたみやしびれなどの身体愁訴が前面にでているもので前記に該当しないのは、身体表現性障害
  • 臨床的特徴
    • 訴えが感情的誇張的、その反面深刻さにかける
    • 多数の診療科や病院を転々とする
    • 2/3は何らかの精神症状を伴う
  • 治療
    • 一人の医師が主治医となる
    • 検査は必要最小限、診察は短時間かつ定期的
    • 医師の姿勢は、治すスタンスでなく、患者の身体の症状と上手に向き合い、医師に依存するのでなく、自分で現実的な問題を解決していけるように癒し、支援することが大切
    • 治療のABC Morrison J 1990
      • Accomodation 受入れ
      • Behavior modification 行動変容
      • Confrontation 直面化
      • Drug reduction
      • Education
      • Family involvement
      • Guilt and anger in the physician
      • Hospitalize ever?

宮津健次、越野好文 虚偽性障害 痛みと臨床 2004;4(4):317-323

  • 原因のはっきりしない痛みを訴える可能性のある精神科疾患として虚偽性障害がある
  • 虚偽性障害ではさまざまな症状が訴えられるが、その動機は病者の役割を演じたいことにある
  • 虚偽性障害の中核で慢性重症型がMunchausen症候群

柳かおり、宮地英雄、宮岡等 痛みと臨床 2004;4(4):303-309

  • 痛みを訴える患者はほとんどの場合、痛みの原因の解明と改善をもとめてまず身体科を受診する
  • ICD-10 心気障害 何か重大な病気にかかっているのではないかという考えに強固にとらわれている
  • 治療
    • つらさを受け止めて共感を示す
    • 身体疾患に対する医学的判断を客観的かつ的確に患者に伝える
    • 症状とうまくつきあっていくことが重要であると患者に伝える
    • 情緒的葛藤や性格面の問題を積極的にとりあげるのは有効でないことが多い
    • 医師側も患者が難治であることを理解し、いまより悪くならない程度に考えて、焦らずにつきあっていく

中尾睦宏、久保木富房 うつ病性障害 痛みと臨床 2004;4(4):310-316

  • うつ病性障害はさまざまな身体障害を合併することが多い
  • うつ病の治療は、薬物療法、十分な休養(1-2M)、家族や社会のサポートが三原則
  • 重症度を見極め、専門機関へ紹介
  • 病前性格 まじめで仕事熱心な人が多く、休むことに抵抗する

森本昌宏 トリガーポイント注射 痛みと臨床 2004;4(4):333-337

  • 筋筋膜性疼痛症候群においては,局所の虚血、乳酸などの代謝産物や内因性の発痛物質の蓄積によってCポリモーダル受容器が過敏点を形成する
  • トリガーポイントとは、筋肉中にふれる索状の過敏点であり、圧迫や針の刺入、加熱または冷却などにより関連域に関連痛を引き起こす体面上の部位である
  • 単なる圧痛点でない
  • 患者が指摘する最もこりの強い部位、ないしは痛みが存在する部位で、かつ圧迫により痛みが放散する部位