本田哲三、中島恵子 認知行動的アプローチ 痛みと臨床 2001;1(3):306-310

  • IASP international association on study on pain 1986
    • 疼痛 実際のおよび潜在的な組織に関係、あるいはそのような損傷に関連して述べられるような不快な知覚および情動的な体験
  • 急性疼痛、難治性疼痛
    • 侵害刺激を主因とする局所の疼痛であり多くは炎症症状を呈し激烈な場合には自律神経症状(発汗、頻脈)を伴う
  • 慢性疼痛
    • 器質的病理が通常治癒しているはずに時期にも持続する。全身いづれの位置にも出現、病理から推定されるような解剖的分布と一致しないことが多い
    • 炎症症状、自律神経症状は認められない
  • 1664 デカルト 疼痛は感覚的経験の一種で、その程度は概ね組織損傷の程度に一致する
  • 1959 Engel 器質的原因に乏しい痛みの訴えを心因性疼痛と名付けた 精神分析の立場から、無意識の葛藤のあらわれで転換ヒステリーの症状としてとらえた
  • 行動療法 精神分析理論への批判から発展
    • 慢性疼痛も評価可能な疼痛行動のみに注目し、強化子の結果として問題行動の出現をとらえようとした
  • 1960年代 認知行動療法
    • 施行上の注意点
      • 安易に心因性疼痛と決めつけない、患者にとってすべての痛みは真である
      • 痛み障害的に対応する
        • 医療従事者がすべての痛みを取り除けるわけではない
        • 痛みが必ずしも身体の重篤な障害を意味しない
        • 適切な身体活動はかえって痛みを減少させる
        • 痛みがあってもそれなりに生活を充実させていくのが長期的には痛みの軽減に繋がる
      • チーム全体でサポート

佐藤英俊 メイヨークリニック ペイマネージメントプログラム 痛みをとらない痛み治療法 痛みと臨床 2001;1(30):329-335

  • 急性痛においては、痛み行動の大部分は痛み刺激に対する直接な反応であるが、慢性痛においては、痛み行動は時間の経過とともに痛み刺激との相関を徐々に失っていく
  • 慢性痛症候群の患者においては、痛み行動は痛みの原因となる痛み刺激からほぼ独立したかたちで繰り返されるため、しだいに日常生活を阻害するようになり、治療抵抗性となる
  • オペラント条件付けに基づいた認知行動療法により、慢性痛の患者に特有の否定的で誤った認知行動パターンを修正しながら、肯定的で現実に即した視点をもてるように支援する
  • 行動療法behavioral therapy
    • 痛み行動を軽減さて行くことを目的とする。患者の痛み行動を無視するのではなく、患者の痛みの訴えは常に本物として受け止め、痛み行動のなかにいつまでもとどまらず、より前向きな行動を促して行く
  • stress management
    • relaxationの仕方、瞑想、正しい睡眠法、時間の使い方、問題解決の方法を具体的に教える
  • Family program
    • 家族や身近な人たちに痛みがあっても痛みと共存して生活して行くことができるということを理解してもらう

塩入俊樹 慢性疼痛(心因性):疼痛性障害を中心にして 痛みと臨床 2001;1(4):403-416

  • 慢性疼痛では痛覚系(痛覚伝導経路、痛覚抑制系)が異常となり、疼痛が引き起こされている
  • 慢性疼痛が進行すると心理的精神的変調を来す
  • 侵害刺激が持続的に中枢神経に伝わることで、脊髄や脳に持続的な変化が生じ、痛みの感作や過敏化がおこってくる
  • 1994 国際疼痛学会の慢性疼痛分類
    • 筋緊張性の痛み(=精神生理学的疼痛)
      • 不安や緊張などの強い情動ストレスによって生じる自律神経系のおよび内分泌系の反応のために、骨格筋の痙攣や局所血管の収縮、内蔵機能の失調、発痛物質の放出など痛みの原因となる生理的変化を起こす
    • うつ病に伴う痛み(=うつ病性疼痛)
      • 下行抑制系が十分に働かない
    • ヒステリー、転換障害、心気症の痛み(=オペラント学習型疼痛、疼痛回避型疼痛)
    • 妄想性または幻覚性の痛み(思考障害型疼痛)
  • 疼痛性障害では疼痛行動(pain behavior:疼痛の体験をめぐる随意的行動)がメインとなる
  • 慢性疼痛患者の心理
    • 過度の不安状態にあり、痛みが少しでもあると、痛むのは病気が悪化しているためと考える
    • 検査でわからないような痛みがあるのではらにそれらに対する罪悪感が存在する
    • 慢性疼痛は、罪悪感にたいする処罰、つまり罪の償いだとされている
  • 治療
    • 患者自身に対する見方を、受け身的、反応的、無力から積極的、臨機応変、有能へ置換し、患者自身がもっている能力に対する自身の回復がなされる

森本昌宏 痛みの評価 痛みの臨床 2002;2(2):220-226

  • 痛みは個人の主観的かつ複雑な感覚体験とそれに対する反応成分によりなるが、この痛みを客観的に評価する普遍的な方法はいまだ確立されていない
  • 痛みの評価を困難にしている要因
    • 患者によって過去の疼痛体験が異なる
    • 年齢、性格、文化的背景により痛みに対する閾値が異なる
    • 身体的、精神心理的な状況の変化によって痛みに対する閾値が変化する
    • 医療従事者側では 痛みを評価する者の疼痛体験が異なる
    • 患者の訴えに対する関心度、理解度によってその評価が異なる
    • 痛みの強度の評価法
      • VAS visual analog scale
      • Graphic rating scale, McGill Melzack scale
      • これらは同一患者の痛みの強度を経時的におうには適するが、患者によって痛みの閾値が異なるので、患者間の比較には適さない
      • 近大式スケール
    • 痛みの正常を中心とした評価法
      • McGill pain questionnaire; MPQ by Melzack 1975
    • 精神心理面の評価法
      • Cornel Medical Index-health Questionnaire: CMI
    • pain behaviorによる評価法