松原貴子
国際疼痛学会(IASP)によると、痛みとは「実質的または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはそのような損傷を表す言葉で表現される不快な感覚性・情動体験」と定義されている。つまり、痛みは、1組織損傷に起因する急性痛と損傷との対応が見いだせない慢性…
これまで本邦では、疼痛は何らかの組織異常から生じる感覚障害として単軸的なとらえ方がなされ、原因探しと末梢への対症的アプローチ、つまり「生物医学モデルbiomedical model」に基づく疼痛治療が行われてきた しかし、慢性疼痛に対しては、それだけでは対…
慢性痛患者の認知と行動の歪み 難治性の慢性痛患者の思考パターンの特徴として、全か無かの完全主義、心の読み過ぎ・先読みの誤りから不安を感じて回避する傾向、”すべき”思考のために他者への怒りを潜在させやすい傾向などが知られている。 慢性痛患者にお…
痛みには、「感覚」、「情動」、「認知」の3側面がある 症状を有する患者の情動や認知、患者を取り巻く社会的情勢までも”一人の個(whole body)”として包括的に捉えアプローチしようとする「生物心理社会的モデル(biopsychosocial model)」を重視しようとす…
これまで、痛みは感覚の異常として、単軸的な捉え方、すなわち生物医学モデルに基づくアプローチがなされてきた経緯があり、そのため慢性疼痛のような多面的要素を含む複雑な病態については対応しきれず、不適切な対応や放置されるケースが多かった。しかし…
痛みは決して時間的経過によって分類・定義されるものではない 急性痛は侵害刺激に対し痛覚系が正常に機能して発生する痛みであり、生体にとってきわめて重要な警告信号であるとともに、生命を維持するために必要不可欠な機能である 慢性痛は痛覚系に異常を…
難治性腰痛は、観血的治療や保存的治療によっても改善されない慢性疼痛であり、身体的要因のみならず、精神心理的、社会的要因が複雑に絡み合った病態を呈し、治療に難渋することが多い。したがって、痛みの身体的要因を追及するだけでは、この腰痛を治癒に…
筋筋膜痛症候群では、過敏に痛み硬く触知されるこりおよび筋スパズムが筋の一部または数カ所に存在し、運動制限や筋力低下のほか、自律神経機能障害を併発する。 硬いしこりとして感じる硬結には、筋線維に平行な帯状やひも状のもの、結び目状や結節状のもの…
腰痛は筋筋膜性のものが最も頻度が高いとされている 慢性の筋筋膜性腰痛は、腱付着部炎のような病態や慢性筋疲労の他、椎間関節障害や椎間板ヘルニアが原因となって筋緊張が亢進し、引き起こされている 起立時に上半身の体重の8割が椎間板に2割が椎間関節を…
実質的な組織損傷に基づいて起こる痛みは急性痛であり、正常な生体反応として必要不可欠な感覚である。一方、あきらかな損傷のない(または損傷が治癒している)場合の痛みは症状というよりむしろ新たに発生した病気、すなわち慢性痛症として捉えるべきもの…
国際疼痛学会の痛みの定義 組織の実質的なあるいは潜在的障害に基づいて起こる不快な感覚性情動性の体験であり、それには組織損傷を伴うものと、そのような損傷があるように表現されるものがある この定義によりキズがないのに痛い、つまり警告信号としての…
痛み系は警告信号ー防御系として原器、生命を維持するために必要不可欠な機能と言える。したがって痛み機能が正常に機能している時の痛みは、必要善であるといえる。逆に、痛み系に異常を呈した結果生じる痛みは、もはや警告信号としての役割を果たさないも…
患者自身が動き、考え、自身の痛みに関する認識や痛み行動を変革していくことが必要である。依存は痛みの治療を難しくしてしまう。医療者に抱く患者の依存を打破することが痛み治療の第一歩といえる キズが治れば痛みも消えるという神話に捉われることなく、…
本邦 慢性痛にたいしても急性痛と同じように、痛みを合併症の一つとして組織損傷が存在するかのように追及し、通り一遍にこの対症的な治療がとりおこなわれてきた 慢性痛は神経系の可塑的変化によって生じることが示唆されている。したがっていまや疼痛部位…