「身」の心身医学 からだの声、こころの声を聴く

中井吉英 「身」の心身医学 からだの声、こころの声を聴く 環境と健康 2011;24:40-48

  • 身につまされる、身の振り方、身を立てる、身を尽くす、身にあまる、身から出た錆、身を入れる、身支度、身につく、身がもてぬ、身の程知らず、身を捨ててこそ、と言った具合に、「身」という言葉は身体も心も縫合した全体を表す言葉として平安時代より使われてきたといわれています
  • 市川裕 身の構造ー身体論を超えて 講談社学術文庫 1993
  • 身につけるというのは考えなくてもできるようにするおt、芝居のように心を表現するように演じるのとは違い、能が無心で舞われることとも深い関係があるように思います
  • 「身」を診ることは、先述したように心身を含めた全体、いわば身心一如の所見を診ることです。
  • 身心一如を最初に行ったのは栄西です
  • 「身」の所見の例
    • 呼吸:患者の呼吸の深度により情動状態を推測する
    • 手掌:発汗の程度により緊張度を推測する
    • 爪:爪は6ヶ月で生え変わる。横溝の位置で(横溝は杖の真ん中で3ヶ月)心身の過労、病気、ストレスなどがあったことができる。この患者では3本の横溝がはいっており、2,3,4ヶ月前に心身の過労があったことが分かる。マニキュアによる爪の炎症ではなく、横溝を隠すためにマニキュアをしている
    • 瞳孔の大きさの程度により自律神経機能の状態を診る
    • 舌歯圧痕
    • 僧帽筋の緊張と圧痛
    • 胸鎖乳突筋の圧痛は目からくる疲れ
    • 深部腱反射の亢進はneuroticな状態を表す
    • Arm drop test:全体の緊張度を診る

Prevalence of symptomatic lumbar spinal stenosis and its association with physical performance in a population-based cohort in Japan: the Wakayama Spine Study

Ishimoto Y, Yoshimura N, Muraki S, et al : Prevalence of symptomatic lumbar spinal stenosis and its association with physical performance in a population-based cohort in Japan: the Wakayama Spine Study. Osteoarthritis and Cartilage 2012;20:1103-1108

  • Wakayama spine study
  • 1009 men 335 women 674 volunteers
  • A mobile MRI (Excelart 1.5T, Toshiba)
  • A well experienced orthopedic surgeon diagnosed whole participants by history taking, physical exams and MRI
  • The diagnostic criteria for symptomatic LSS used in the present study were based on the LSS definition from the North American Spine Society (NASS) guide line, which requires presentation of both LSS symptoms and radiographic signs of LSS.
  • radiographic classification of LSS none/mild/moderate/severe
  • Radiographic LSS also required the severity to be more than moderate and the radiographic finding needs to be consistent with the symptoms and outlined above.
  • The percentage of participants with moderate or severe radiographic central stenosis was 76.5%, while the prevalence of symptomatic LSS was 9.3%
  • in conclusion, the present study clarified that the prevalence of symptomatic LSS was about 10% in a cohort resembling the Japanese general population.
  • コメント
  • 変形性関節症、肩腱板断裂など画像の偽陽性の報告は多い
  • 本検討のデータより、76.5%にmoderate/severeの画像所見があったが、症状があったのは9.3% つまり画像所見があったうち、12.2%(9.3/76.5)しか症状を伴っているに過ぎなかった。
  • 画像所見があって、症状がない(偽陽性)は87.8%ということになる。
  • discussionの中では、この偽陽性については全く触れられていないが、臨床的に貴重なデータと考えられる。

痛みの責任は誰にある?

柴田政彦、榎本聖香、山田恵子、藤野裕士 痛みの責任は誰にある? 日臨麻会誌 2017;37(7):838-843

  • 国際疼痛学会の定義 痛みは実質的または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはこのような損傷を表す言葉は使って述べられる不快な感覚・情動体験とされている
  • さらにこの定義に続く注釈の中で、「痛みは常に主観的なものであり、人は小児期の外傷などの経験と通じて、「痛み」という言葉の使い方を学ぶ」と解説されている
  • 傷み 損傷を意味する injury 傷みはpain
  • 日本語ではinjuryとpainとが同じ音で表現されている。すなわち、会話などの音の情報の場合には「痛み」と「傷み」の区別が困難で、文脈からその意味を判断することになる
  • われわれは、自分自身の経験から、「痛み」と「傷み」とをあまり区別せずに会話しており、医療者として患者を診る場合にもその区別があいまいなまま診療してしまうことがあるようだ。
  • しかしながら、痛みの原因を特定できない慢性痛の診療を行っていると、このわれわれ自身の「いたみ」に対する捉え方のあいまいさが、「痛みの責任」の所在がどこにあるかの判断のあいまいさに影響しているのではないかと気づく
  • 痛みは「不快な感覚・情動体験」であるので、その体験が自分以外の他者に伝わる場合には、「痛いという言葉にして発する行為」、「顔をしかめる」「足を引きずる」などの「痛そうなしぐさ」など、他者と共有できる何らかの行動が不可欠である
  • 「痛み」は「行動」として表出されなければ他者に共有されることはない。すなわち痛みそのものは客観化できないもので、客観化しているものは痛み行動である
  • 慢性痛には、オペラント条件づけによる痛み行動の強化が寄与しているとかんがえられいる
  • 訴訟の場においては、痛み行動を強化する周囲の要因や痛み行動の強化に関連した本人の資質などに関連する情報がない状況で、裁判官は何らかな判断をくださなければならないという矛盾がある
  • 不公平感の評価尺度

図2の採血などの血管穿刺を受ける前にお読みくださいは、全ての採血に掲示が必要であろう

救助者として登場するもゲームを繰り返す線維筋痛症の2症例

井上敦裕、芦原睦、古賀七葉 救助者として登場するもゲームを繰り返す線維筋痛症の2症例 交流分析研究 2017;42(1):38-44

  • 症例Aのゲームは、「こんなに無理をしているのに」である
  • Aは「無理をして世話をしていたのになぜ叱られたのか、こんなはずではない」という思いを抱いた。そして仕方なく世話をやめ、結末として、「こんなに頑張っているのにわかってもらえない」というラケット感情を表出した
  • 症例B 相手のためを思って行動していたが、家族や仲間に迷惑をかけていると感じ、結末として「無理に仕事を引き受けて同じことを繰り返してしまうダメな自分」というラケット感情を感じることになった
  • Aがゲームを演じていた原因 生育歴や生活環境
    • 幼少期に受けた父親からの虐待や両親から見捨てられた体験が根底にある
    • 居場所のない家庭の中で、唯一母親的な存在であった祖母の介護をすることがA自身の居場所を作っており、祖母を亡くしたことが少なからずゲームを演じる原因として影響を与えていると考えられる
    • 「こんなに頑張っているのにわかってもらえない」というラケット感情を味わっており、そのラケット感情がストレスとなり疼痛の増悪に結びついていると推測される
  • Bがゲームを演じていた原因 生育歴や生活環境
    • Bは幼少期より支配的な姉に仕事を押し付けられ、面倒と思いながらも反発できずに引き受けていた。それを続けるうちに、頑張っていないと自分は認めてもらえないと考えるようになったことが仕事を引き受けることにつながっていると考えられる
  • ゲーム分析により自身の演じているゲームに気づくことのみでも症状の軽減にはつながったが、介入により行動変容がなされるとより効果的であると推察された
  • 両者とも始めは「救助者」として登場し、相手のためを思って行動していたが、途中で症例Aは「迫害者」に役割交換する「無理をしている型」、症例Bは「犠牲者」役割交換する「お節介型」のゲームを繰り返していた

くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン(改訂版)

くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン(改訂版) 子のこころとからだ 2015;23(4):477-487

  • もし、子どもの痛みが、くり返して何度も起こってくる場合には、解決されていない身体的疾患の存在に加えて、心理社会的な影響も考慮する必要があります
  • 子どもの訴える痛みがどのようなものであっても、「放置してよい」「仮病」「気のせい」と片づけないで、子供と家族との訴えを受けとめて、丁寧に説明と指導を行い子どものつらさに寄り添う姿勢が大切です
  • 痛みは大人でも客観的評価が難しく、表現力や語彙の乏しい子どもではなおさら困難です
  • 痛みが自覚症状で主観的である以上、対応は痛みへの共感という子どものこころに寄り添うことから出発しなければなりません
  • 子どもが痛みを訴えたときに、適切な対応がなされない場合どうなるのでしょうか。後年痛みに対して過敏になり、成長後の痛みへの反応の個体差にも影響するといわれています。これは年少児の痛みが成人の、疼痛性障害に関わっていることや、被虐待児に疼痛への過敏性(または鈍感さ)がみられることでも示されています。このことは、慢性疾患や医学的処置によって引き起こされた子どもの痛みに対して適切な処置をすることが、子どもの疼痛のコントロールやその後の人生に、大きな影響を及ぼすことを意味しています。
  • 被虐待児にみられる痛み
    • 被虐待児では、さまざまな痛みを訴えることがあります。
      • フラッシュバックのときに過去に体験した実際の痛みを再体験する
      • 知覚過敏性の亢進によって、ちょっと触れただけでも痛みを感じる
      • 性的虐待を受けた場合に、腹痛や性器の痛みなどのpelvic painがみられる
      • 手首などの違和感や、痛みを感じ、その部位からリストカットを行う
      • 身体化症状・心身症的症状として、腹痛、頭痛、手足の痛みや跛行がみられる場合や足や手がゆがんだ形で固定され、さらに著しく痛むなどもみられる
    • これらはすべて外傷性記憶によるフラッシュバックや、解離とそこからの回復と関係していると考えられます。また痛みの類似の感覚で、痒みや身体的違和感が同時に亢進することがあるので、「そのようなことはありえない」と否定しないようにします。

複数のPDF fileにまとめてパスワード設定する

  • 課題 複数のPDF fileにまとめてパスワード設定する
    • mac/プレビュー PDFとして書き出す/詳細を表示で、パスワードを設定できるが、ファイルが多くなると煩雑
    • mac/adobe acrobat reader dcではパスワード設定は有料(?)
    • 私の持っている有料版のadobe acrobat XI/winでは、ツール/保護/暗号化でパスワードを設定できるが、ファイルが多くなると煩雑
    • acrobat dc pro(有料)だとアクション/バッチ処理という機能でまとめて処理できるようだ。
  • 代替案 mac/automatorでまとめてパスワードを設定
  • 環境 macOS sierra 10.12.6
    • アプリケーション/Automator
    • ライブラリ/ファイルとフォルダ/指定されたFinder項目を取得 を右にdrag&drop
      • 下の追加で、変換したいファイルをすべて指定
    • ライブラリ/PDF/PDF書類を暗号化 を右にdrag&drop
      • パスワード、確認のところでパスワード設定
    • ライブラリ/ファイルとフォルダ/Finder項目をコピー を右にdrag&drop
      • パスワードを設定したファイルの保存先を指定
    • 右上の実行をクリック
    • 変換後のファイルはファイル名に"(暗号化)"が追加される

苦痛を科学する

苦痛を科学する―ひとの苦しみを理解する話

苦痛を科学する―ひとの苦しみを理解する話

  • 恐怖記憶の形成 アクチビンという脳内タンパク質の一種の活性が重要
  • マウスの記憶した匂いと危険性の関係性は少なくとも2世代は受け継がれる
  • 扁桃体の損傷は恐怖を軽減
  • 苦痛分子 コルチコトロピン放出因子1 CRF1 下垂体から分泌させるとストレスや不安を引き起こす作用
  • 人が快感を覚えた時に反応する側坐核という脳の部分が、痛みを感じたときに、痛みに先んじて反応する
  • 側坐核が活発に活動する人ほど嘘をつく割合が高い
  • 側坐核の活動が高い人ほど、嘘をつかずに正直な振る舞いをする際に、背外側前頭前野と呼ばれる領域に活動が高い
  • 報酬系 腹側被蓋野という場所から、側坐核に向かって走る内側前脳束という神経の束が報酬系の主体であり、側坐核から放出されるドーパミン報酬系の活動に重要な役割を果たしている
  • 腹側被蓋野 黒質赤核に囲まれた内側の領域 A10細胞集団と呼ばれる、ドーパミン作動性ニューロンが多く存在
  • 情動は苦痛を修飾
  • 先天性無痛症、先天性無痛無汗症
  • 図46 腰椎の脊柱管の中に、脊髄の断面図が書かれている。これは不適切。正しくは馬尾。
  • コラム26 脊柱管狭窄の病態
    • 2行目「脊柱管狭窄のみで脊柱管狭窄症の症状は説明できない。」とあるが、9行目「脊柱管狭窄の症状と姿勢には深い関係があり、沿った姿勢をとると症状は悪化することが多く、逆に前屈姿勢をとることにより改善することが多い。これは姿勢によって、脊柱管の内腔がせまくなったり、広がったりする変化が生じることに起因すると考えられる。」の最後の一文と2行目は矛盾しないか